ロシアの核懸念で、オランダでのヨウ素剤品切れ

ロシアがウクライナの原発を占拠して以来、オランダ国内でも核の被害を懸念する人が増えている。ヨウ素剤は従来原発近くの住民に国が配布してたものだったが、最近では薬局やドラッグストアで購入する人が増大し品切れが起きている。カリウムヨウ素剤の需要が急増しているため、オランダ健康省は月曜日、薬局では一人1箱のみ販売するよう通達した。

しかし、被爆に対しヨウ素剤が実際に効果があるのだろうか? 専門家の意見は別れている。論理的にはシンプルだ。ヨウ素剤を服用すれば、甲状腺が安定したヨウ素で飽和状態になる。その後も放射性ヨウ素を吸入すると、甲状腺はそれを吸収しなくなる。これにより、特に幼児の甲状腺がんのリスクが軽減される。オランダ政府が原子力発電所の近くに住む 120万人以上の人々にヨウ素錠剤を配布した理由である。

しかし、ヨウ素剤だけで被爆の被害を防げるのだろうか? 国立毒物情報センター(NVIC)の放射線専門家であるマリアンヌ・レインダース氏は「核兵器が使用されると、ヨウ素以外にも多くの放射性元素が放出される。これらがガンを発生させる可能性はある。ヨウ素剤だけで防げるわけではない。」とコメントしている。また核爆弾から放射線ヨウ素が直接身体に入るわけではない。「広島や長崎での例を見ればわかるが、ヨウ素粒子の大部分が結合している。砂の粒を思い浮かべればよいが、人はそれを吸入しない。ヨウ素錠剤は吸入されたヨウ素に対してのみ保護する。それが甲状腺に到達するヨウ素だからである。これは、原子力発電所で事故が発生した場合(ヨウ素粒子が結合していない)とは異なる。」

健康省は「ウクライナでの原発で事故があった場合でも、2000キロも離れているオランダでヨウ素剤を購入する必要はない。」とコメントしている。「放射線粒子が風によって運ばれて来たとしても、病気になる可能性はない。」という。「しかし近くに原爆が落ちた場合にはヨウ素剤は役立つかもしれない。」と原子力安全放射線局は健康局に助言している。またアムステルダム・メディカルセンター(AMC)の放射線専門家ルーカス・スタルペルス氏も、「原爆投下の直前か直後にヨウ素剤を服用するのは賢明かもしれない。」とコメントしている。ヨウ素剤はなんといっても安い。北海はヨウ素剤の無尽蔵の宝庫なので、全住民に配布するのは簡単だと、同氏。ただし、ヨウ素剤の服用には副作用があることも覚えておきたい。カリウムは不整脈を引き起こす可能性があり、ヨウ素は肝臓の障害を引き起こす可能性がある。

保健省は、恐怖からヨウ素剤を買い求める人が殺到し、買い占めが起きることを懸念し、「一人1箱」という制限をつけたもの。コロナ禍の初めに、トイレットペーパーの買い占めが起きたが、同じような状況だ。また、ヨウ素剤の服用は健康省の決定後にのみ服用が許されている。

ヨウ素剤に関しては、オランダのSciNethさんが詳しく書かれているので、以下のリンクをご参照ください。

SciNeth【安定ヨウ素剤についての注意】