ウクライナ危機で深刻なガス不足が懸念

ロシアのウクライナ侵攻の懸念から天然ガスの価格が急騰している。ロシアとNATOが戦争状態になりNATOが制裁を加えることになれば、ロシアが欧州向けガスパイプラインを閉める可能性も大きい。オランダ政府も最悪の事態を想定しシナリオを描いている。フローニンゲン州の地底に埋蔵されている天然ガスを再び採掘するのだろうか? それとも?

フローニンゲン州の地底には4,500億立方メートルの天然ガスが埋まっている。しかしガス採掘による地震で家屋の崩壊が起きていることで、2018年に2022年には採掘を停止すると政府は決定した。例外は極寒の冬でガス需要が高まる場合は2024年までの採掘は許可されている。経済気候省の気候担当イェッテン大臣は、ロシアが欧州向け天然ガスの供給をストップしてもフローニンゲンガス田を採掘再開する可能性は低いと述べている。

フローニンゲン州のガス田は1962年に採掘が開始された。当時政府は将来の原発への移行を念頭にガスの早期販売を計画し、イタリア、ベルギー、フランス、ドイツへの販売契約を結んでいる。さらに温室栽培などの業種へは特別な価格で提供をしている。当初は35基の原発設置を計画していたが、これは実現せず、その代わりに80億ユーロ以上をかけて貯蔵と欧州各国へのパイプシステムを建設した。またロッテルダム港にはガス不足時のバックアップとしてLNGターミナルを建設している。LNGターミナルは長い間使われていなかったが、現在は各国、特に米国からの供給で満タンとなっている。

政府は現在大量のガス利用をしている60の企業と協議中である。タタスチールなどの鉄鋼業者は莫大なガスを利用しているが、これらを減らす交渉を行っている。消費者や欧州他国へ向けてもガス消費を控えるよう呼びかけが始まることもシナリオに含まれている。またドイツなど欧州の他の地域でのガス田採掘も視野に入れている。
画像:ENTSO-G, Capacity Map (2017)