コロナウィルスの拡大によるオランダに住むアジア人への差別に「No」

バスに乗ったら「コロナウィルス」と叫ばれ、顔をコートで隠す動作をされるなど、オランダに住む中国人そしてアジア人への嫌がらせがあとをたたないという。中国から発生した新型肺炎が脅威を増す中、オランダ在住の中国人やアジア人に対する人種差別的発言が増えている。ワーヘニンゲンにある中国人学生が多く入居しているフラットでは、エレベータに人糞が塗られ「中国人は死ね」という落書きが発見された。ロッテルダムでは中国人に罵声を浴びせたり脅しをかけるなどの事件が発生している。今回の人種差別的行為の拡大に中国系オランダ人らは胸を痛め、これに立ち向かう署名運動を始めた。

引き金となったのは、ポップ音楽を流すラジオ局「ラジオ10」のDJが流したカーニバルの歌だ。「おい、みんな。このウィルスは止まらないぜ。この国にはいらない。あの臭い中国人がいけないのさ。中華料理は食うな。そうすれば心配ない。そう、予防が一番。中国人より予防さ。」これが流れてから、反人種差別団体に3000件の通報があったという。

中国系オランダ人の中には、「この歌はコロナウィルスを理由に中国人を差別しているにすぎない。実際には長きにわたる中国人に対する差別と嫌悪がある。」と分析している人もいる。1960年代からオランダに移住してきた第一世代の中国人は筆舌に尽くしがたい辛酸を嘗めたという。「うんこ中国人(Poepchinees)」という中国人に対する呼び名や、子どもたちが誕生会で歌う「ハンキー・パンキー・シャンハイ」といった中国人を揶揄する歌は小学校でも歌われている。第一世代の中国人は我慢強いだけでなく声をあげることをしなかった。オランダ人となった第2,第3世代の中国人たちは、差別に立ち向かう運動を開始した。

中国人とアジア人差別に関する嘆願書にはすでに50,000人以上が署名している。「オランダは寛容の国だというが、表面下では人種差別的な考えがはびこっている。」と指摘する人もいる。また、今回の事象はここ4-5年に政治家とメディアが「反中発言」を繰り返してきた結果だという意見もある。また急速に経済的発展する中国が米国やオーストラリアで「黄禍」と見られていることも関係していると言えるだろう。中国に対する恐れが、コロナウィルスを引き金に中国人に対する嫌悪に発展した。

嘆願書