蘭ユニリーバ社、新戦略でロイヤル・ダッチ・シェル社の時価総額を超える

オランダの大企業といえば、石油のロイヤル・ダッチ・シェル、食品・洗剤などのユニリーバ、金融のINGグループ、そしてビールのハイネケンなどがあげられる。英蘭企業であるシェル社がこれまで時価総額ではオランダ最大であったが、昨今の原油安で業績が悪化し、トップの座をユニリーバ社に譲ることになった。1月19日のアムステルダム株式市場の終値で、シェル社の時価総額は1142億ユーロ。これに対し途上国での業績を伸ばしているユニリーバ社は1151億ユーロと、オランダ最大の企業となった。

ロッテルダムに本拠を置くユニリーバという企業名はあまり知られていないが、「ダヴ」や「リプトン」や「クノール」など誰でもが知っているブランドをスーパーマーケットとドラッグストアで販売し、圧倒的な地位を築いてきた企業だ。辣腕経営者ポール・ポールマンが2009年からCEOに就任して以来、上昇の一途をたどり、2015年度には10%売上を伸ばし533億ユーロを記録している。そして現在注力しようとしているのが、「アクション」などの超低価格ショップ向けとと、これと対局に位置する高級品向け商品攻略である。

先日ダボスで開催された世界経済フォーラムで、貧困支援団体オックスファムは「世界の62人の金持ちの総資産が貧困層50%の総資産に匹敵する」と発表した。この報告を受けたユニリーバの取締役社長であるポールマン氏は「悲惨なことだが、これが現実である。我々の戦略も貧富の差の拡大という事実に合わせていかねばならない。」とコメントし、富裕層と貧困層の両方に焦点を当てる戦略を強調した。

ユニリーバは欧米での消費者物価の低下に悩まされてきた。販売量は増えているものの価格低下で売上が延びない。そこで、高級製品の積極的マーケティングに乗り出し、そこから利益を得るという戦略に出る。金銭に余裕がある人はシャンプーは「レン」や「ケート・サマービル」のような50ユーロ以上する商品でも買う。マスタードでも1ユーロのものから80ユーロのトリュフ入り「マイユ」まで揃えている。安いリプトンの紅茶を求める低所得層の人も多いが、40ユーロもする「T2」という紅茶を求める顧客も増加している。そしてこの高級セグメントが2015年度には急速に売上を伸ばしているのである。