テロと難民とギリシャ危機、そしてゴッホとミッフィーの2015年
パリのシャルリ・エブド誌の銃撃事件(1月7日)から始まり、2015年にはイスラム過激派ISによるテロ事件が世界各地で起きた。3月18日にはチュニジアのリゾートでの銃撃事件、8月にはアムステルダムからパリに向かう高速列車タリス内でのテロ未遂、10月10日にはトルコのアンカラで102名が亡くなるテロ事件が起きている。そして11月13日にはパリで同時多発テロ事件で130名が死亡するというショッキングな事件が起き、ブラッセルではテロ警戒で公共交通機関が止まり学校が閉鎖されるなど、欧州各地に影響が及んだ。オランダではテロの脅威度は前年と変わらず「かなり深刻」としているものの、人が集まるイベント会場など一部で荷物チェックはあるが、表面上では大きな変化はないように見える。しかし「オランダ国内でテロが起きる可能性は十分ある」と12月23日に警視総監がインタビューで警備体制の強化を強調している。
ISは中東で勢力を増し、イラクやシリアの住民を脅かしている。シリアではISによる住民殺害だけでなく、アサド大統領による反対派弾圧で、多くの国民が近隣国に避難し、欧州への苦難の道のりを選んだ人も多い。欧州への難民の数は膨れ上がり、これまでの国ごとの対応ではすまされなくなった。10月に欧州は、イタリアとギリシアに上陸した難民を欧州各国に分散させることに同意した。オランダでも今年はこれまでに4万6000人が難民申請している。国民は一般的に難民に対し同情的であり、ボランティアを申し出る人の数も驚くほど多い。しかし、一方で反移民反イスラムを標榜するPVV党の支持者などが、難民センターの開設に反対するデモを行ったり、暴動事件を起こしているのも事実である。
テロと難民関連ニュースの影で破綻の危機にあったギリシャ問題はあまり語られなかったが、ユーロ圏財務相は8月19日、総額860億ユーロ(約11兆8000億円)規模の第3次ギリシャ支援プログラムを正式承認した。ギリシャの債務支払いや経済再建に道が開かれた。
オランダは、積極的な予算削減で、欧州連合(EU)の加盟国の原則である毎年の財政赤字を対名目GDP比3%以内という目標を達成した。医療費などの福祉予算の削減は国民の反発を招いたが、来年度の税制改革で多くの国民が恩恵を受けることで不満を抑えることに成功したように見える。経済は不況から脱した様相で、消費者の購買力も上向きである。
小売業の業界図も大きく塗り替えられつつある。中堅デパートチェーンであるV&Dを始め、靴チェーンであるマッキントッシュ、そしてドラッグストアのチェーンDAの経営困難による倒産が危ぶまれている。高級品を扱う店と廉価のチェーン店が躍進を続ける中、中間価格製品を売る店が苦闘している。
国土の4分の1が海面下であり気候変動の影響を直に受けるオランダにとって、環境問題は重要である。12月12日、国連気候変動枠組み条約(COP21、パリ協定)の締結で、世界の気温上昇を2度未満に抑えるための取り組みに合意が行われ世界196カ国の国・地域がすべて、温室効果ガス削減を約束した。オランダでは企業や家庭で省エネルギー対策が進められることになる。欧州では5年以内に現在280基ある石炭火力発電所の大半を廃止する予定だが、オランダも例外ではない。すでに廃炉が決まった発電所もある。
スポーツではサッカーの欧州カップでオランダ代表は、予選でさほど強国とはいえない相手に屈辱的な敗北を重ね、32年ぶりに本大会に出場できなかった。一方、8月に北京で行われた世界陸上ではオランダのスキッパー(シッパー)が女子200メートルを21秒63で走りぬけ初優勝した。また世界最年少のF1レーサー、フェルスタッペン(17)はグランプリで4位を獲得するなど、世界の注目を浴びている。
2015年はゴッホ没後125年、そしてミッフィー誕生60周年で、各地でいろいろなイベントが開催された。ゴッホとミッフィーのイベントは日本でも今年そして来年開催予定である。
ラジオ局Radio2では聴者が選ぶポップミュージックのトップ2000が年末に発表されるが、今年のトップはジョン・レノンの「イマジン」。パリでの同時多発テロ事件のあとに流されたこの曲が多くの人々の心に残っているようだ。