オランダの2021年をふり返る
ポートフォリオの今年1年のニュースから主なできごとやその背景を取り上げてみた。ニュースはいつも否定的なものばかりなので、暗いオランダ像が浮かぶかもしれないが、概して平和で豊かで国民の幸福度も世界5位と高い明るい国である。
ペーター・デ・フリース氏殺害される
アムステルダム市内で7月、オランダで最も有名な犯罪ジャーナリストのペーター・デ・フリース氏が殺害された。この事件にはドラッグ関連の犯罪組織が絡んでいるといわれているが、オランダのナルコス化(麻薬国家)が浮き彫りにされた。パナマやコロンビアからロッテルダム港にコンテナで運ばれてくる麻薬の量は年々増加している。ロッテルダム経由で欧州各地に運ばれるのだが、今年は数万キロのコカインが押収され、港のコンテナで寝泊まりしている運び屋が多く逮捕されている。
連立政権発足まで史上最長
3月に税務署による保育補助金スキャンダルで内閣総辞職、総選挙が行われた。それからなんと9ヶ月後の12月に前回と同じ4党で連立政権が発足した。この間は前政権が暫定的にコロナ対策を中心に政策を実施していた。
気候変動
夏には世界的な気候変動による災害が目立った。山火事、干ばつ、そして大洪水が各地を襲った。オランダでもリンブルグ地方が川の氾濫で大洪水に見舞われ大きな被害を被った。グラスゴーで開催された第26回気候変動枠組条約締約国会議 (COP26) では、世界の気温上昇を1.5℃に抑えるという目標が設定されたものの、勢いは弱々しいものとなった。温暖化による海面上昇で最も被害を被るはずのオランダは、これまで環境対策が遅れていた。しかし政府は2050年までにゼロ炭素排気を目標に、環境対策に本腰を入れる構えのようだ。原発新設も視野に入れている。
コロナ対策
ロックダウン、規制緩和、再度のロックダウンと感染者数の上下で政府は規制を行ってきた。今年からワクチン接種も始まったが、12月の感染者数は過去最大となり、ICU施設が満杯になるなど医療が逼迫した。規制により各地でデモや暴動も起きている。ワクチン肯定派とワクチン否定派による社会の分断も目立った。
好景気とインフレ
ロックダウンにもかかわらず、欧州他国や米国と同様、オランダの経済は好調だった。しかしエネルギー費の高騰などによるインフレ率も高く5.6%という高率を記録した。人手不足も大きな問題となった。さらに不動産価格も過去最大を記録、住宅不足は最悪な状態が続いている。