【お天気コラム】5月のお天気

霜」に注意が必要なのはいつまで?

2週間ほど続いた「寒の戻り」もようやく終息し、ほっとしている方も多いのではないでしょうか。先週は氷点下まで気温が下がって霜のおりた所もありましたが、この時期の降霜はそれほど珍しくはありません。

Weeronlineによると、KNMIの主要観測所があるDe Biltでは、平均すると6年に一度の頻度で5月前半にも霜のおりることがあるそうです。

ところが、5月後半になると話が変わってきます。オランダでは5月11日から14日は「IJsheiligen(氷の聖人)」と呼ばれ、この期間を過ぎると霜の心配がなくなると言い伝えられています。「IJsheiligen(氷の聖人)」以降にDe Bilt で霜がおりたのは、1901年の観測開始以来122年間でたった9年だけ。5月後半以降は朝晩の冷え込みが緩むようになり、ようやく一安心できそうです。

夏も近づく八十八夜

日本には「八十八夜の別れ霜」という言葉があり、この頃には霜のおりる日が減ることから、農作業を始める目安とされてきました。「八十八夜」はいつかというと、立春から数えて88日目。つまり5月1日の夜が「八十八夜」です。日本でもオランダと同じように霜害から農作物を守るため昔から言い伝えられていたのです。

冬にも霜はおりますが、ほとんど被害は発生しません。これは、そもそも冬には寒さに弱い植物が育っていないためです。問題は春以降。いったん暖かくなって植物が育ち始めた後に、寒さがぶり返して霜がおりるとダメージを受けてしまうのです。特に農家の方への被害は大きく、日本では「静かな気象災害」とも呼ばれています。

「八十八夜」と「氷の聖人」を過ぎても

年によっては八十八夜以降も霜がおりて農作物に被害がでることがあるため、日本には「九十九夜の泣き霜」という言葉があります。これは、八十八夜の後でも遅霜の可能性があるので油断禁物だということです。

オランダでは6月5日から20日頃にかけて「Schaapscheerderskou(羊の毛刈り寒波)」がやってくることがあり、季節逆戻りの寒さに見舞われることも少なくはありません。なぜ「羊の毛刈り寒波」と呼ばれているかというと、夏本番前の気温が低い曇天の日が羊の毛を刈るのに適しているためだそうです。この時期、場所によっては、まれに厳しい冷え込みになることがあるので気が抜けません。実際、1955年6月18日にはWitteveen(Drenthe)で霜がおりたことがありました。

霜がおりやすいのは「晴れて、気温が低く、風が弱い」ときです。降霜の可能性がある場合は、庭やテラスに置いている寒さに弱い植物を室内に入れたりカバーをかけたりして、大切な植物が傷んでしまわないようにお気をつけください。

参考

Wat zijn de IJsheiligen?

Vorst met IJsheiligen steeds zeldzamer

Wat is schaapscheerderskou?

プロフィール

竹内青空(たけうち あおぞら)

徳島県出身。2021年よりデン・ハーグ在住。インスタグラム(@aozora_takeuchi)でオランダの天気や生活について発信中。日本ではウェザーニューズに所属して気象原稿作成やラジオの気象情報を担当、千葉テレビでも気象キャスターとして出演していました。