格安スーパー「リドル(LIDL)」の卵で知られるキップスター(Kipster)の鶏にはいわゆる鶏用穀物餌は与えられていない。キップスターを産む鶏は、売れ残りのラスクや古くなったパンを食べ、柵をよじ登ったり飛んだりはねたりが自由な環境で成長している。キップスターのアプローチは、起業家ルート・ザンダースの会社に世界的な成長をもたらした。
実は「緑の」キップスターで成功するずっと前に、ザンダース氏は破産している。オランダ最大の養鶏場の一つを所有していた兄弟ととともに、何百万羽もの鶏をポーランドからフランスに至るまで、さまざまな国の巨大な厩舎で飼育していた。年間売上高4,000万ユーロを達成したが、それにも関わらず倒産してしまった。それは手に負えない成長と鳥インフルエンザの発生の結果だった。
無一文になったザンダースは、ドロンテンの農業大学で教鞭を取っていたが、ある日、オランダの養鶏の成功の説明を知りたいとアフリカ人が訪ねてきた。彼はここで鶏の餌に必要栄養素がたっぷりはいった穀物が使われていることを誇らしげに説明した。これに対してアフリカ人が言ったのは「もし私たちがその土地からあんなにおいしい食べ物を持ってきたなら、自分たちで食べただろうに。」このコメントに触発されたザンダース氏が始めたのが、このキップスター養鶏所である。
養鶏場のエネルギーはすべて太陽光。高さ 1 メートルの窓の向こうで、24,000 羽の白い鶏が餌を探してる。売れないラスク、割れたクリスプブレッド、古くなったパンなど、土地からの残り物や産業からの残留物が餌になっている。従来の養鶏場のようにすし詰め状態で鶏が暮らすのとは正反対に、鶏は茂みの下に隠れたり、よじ登ったりして遊んでいる。長引く鳥インフルエンザのため数か月間屋内に留まらなければならなかったが、今では再び外に出ることができる。同社の最新の年次報告書によると、キップスターの卵は、従来の産卵鶏農場の卵よりも60パーセント少ないエネルギーが使用されている。
キップスターのコンセプトは世界で広まりつつある。同社は卵を スーパーのリドル(Lidl) に独占的に卸し、年間 1,500 万個以上の卵を販売している。当初、オランダには 3 つのキップスター養鶏場があったが、最近米国に 4 つの新しい養鶏場が追加された。米国産のキップスターは米国で2番目に大きいスーパーマーケットであるクローガーによって販売されている。
ザンダース氏は、農業は「動物を感情と感情を持った生きた知的存在として認識すべき」と信じている350人の農民からなるグループであるCaring Farmersの会長でもある。
「第二次世界大戦後、オランダは食料を大規模かつ安価に生産する方法を発達させ、世界第2位の農業輸出国となった。しかしその考えは今では時代遅れになっている。今私たちは持続可能性を必要としている。」とザンダース氏は語っている。
(参照記事:Het Parool)