エスカレートする農家のデモと破壊行為とその背景

このところ、農業従事者による高速道路の閉鎖や警察に対する暴力、そして担当大臣の自宅への侵入といった事件が続いている。高速道路にトラクターを連ねて行うデモは違法ではなかったが、だんだんとエスカレートし、警察に対し暴力を振るったりするなど、違法行為も目立つようになり、ルッテ首相も断固として立ち向かう姿勢を示している。

さて、この農業従事者のデモは何に対して反対しているのか? 彼らは何を恐れているのだろうか? 根底にあるのは地球温暖化とその原因となる環境汚染に対し、政府が目指している窒素酸化物削減方針である。二酸化炭素削減と平行して目指しているのは窒素酸化物削減で、この原因のひとつが農家による窒素酸化物排出である。

窒素酸化物を発生させているのは農家だけではなく、車、航空機、工場などがある。農家はアンモニアという形で窒素を廃棄している。窒素は自然界に必要な物質なのだが、多すぎると生態系に障害を及ぼしたり健康上の被害ももたらす。政府は2019年から、高速道路でのスピード制限と建設制限、そして農家の廃棄物制限といった措置を開始した。窒素排出量は、2019年と比較して2030年までに半分にすることを目標としているが、他の分野と比較し農家の窒素排出が減っていない。政府は今年の6月に「自然保護地区付近の農家は窒素排出量を70%減らさねばならない。」と発表、これを期に農家の反発が始まった。

農家による窒素排出は、酪農農家の糞尿と農作のための肥料による。排出量を70%減らすということは、家畜を半分に減らすなど、これまでのビジネスを存続できない危機に直面する可能性も出てくると、農家は恐れている。
専門家によれば、肥料を希釈したり、家畜の糞尿処理の方法を変えるなどで、このままのビジネスを維持できる可能性もあるという。ただ、オランダの農業は一般的に効率化と生産量を重視していることにも窒素排出過多の原因となっていることも確かだ。

いずれにせよ、政府と農家の見解の差を話し合う機会が設けられる予定だ。