オランダ産「イカゲーム」
「イカゲーム」といっても現在世界を席巻しているネットフリックスのシリーズではない。イカやタコといった従来は地中海や南大西洋で捕れた魚が、オランダの地元産物に変わりつつある。気候変動は海にも大きな影響を与えていて、今ではオランダの漁師がヤリイカやモンゴウイカ、そしてタコまでも水揚げしている。
タコはスペインのガリシア地方が有名で、観光客は柔らかく茹でてパプリカと塩をつけた料理を楽しんでいる。イカもスペイン、イタリア、そしてギリシア料理には欠かせないもので、バカンスの思い出として記憶しているオランダ人も多い。ところがこの海産物地図が変わりつつある。
アムステルダムのスペイン料理レストランで37年間働いているシェフは、これまでガリシア地方から輸入していたイカが、北海や海峡でオランダの漁師が捕獲したものに変わっていると語っている。
地球温暖化は海水の温暖化を引き起こしており、イカ、タコ、イワシ、タイといった魚が北へ北へとゆっくりと移動している。そしてこれまで北海名産であったタラなどはもっと北へと動いている。
ただ残念なことに、イカやタコが目の前にあるにもかかわらず、保守的なオランダの消費者は「気持ちが悪い」とまだ敬遠している。休暇では食べても、オランダに戻ると白身魚が一番という人が多い。そこで業者は捕れたイカをなんとスペインやイタリアに輸出している。アイマウデンの卸売業者によれば、オランダで10月から4月に捕れるイカは最高の品質だという。
それでも時代に敏感な漁師たちもいて、これまでヒラメやカレイを中心に漁をしていた漁師(Melissants氏)が、船を改造してイカ漁を始めている。船を改造するだけでなく、ヌメヌメしていて墨袋が破損しやすいという欠点を解消するための、新しい漁法も生み出した。
ただ、オランダではまだタコの捕獲は少なく、肉厚で質の高いガリシア産にはかなわない。しかしオランダの海で捕れるヤリイカは最高の品質である。気候変動はここまで来ていて、良質のタコが大量に捕れるようになるのも時間の問題かもしれない。