お天気コラム 嵐のシーズン

「嵐のシーズン」と言えば、日本では台風がくる8月や9月を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか?ところが、ここオランダでは秋と冬。なぜ季節が違うのでしょうか?それはオランダと日本で嵐の種類が異なることが関係しています。

そもそも台風とは?

「熱帯低気圧」という「暖かい空気」だけで構成された低気圧が、南の海上で発達して最大風速が約17㎧を超えたものを日本では「台風」と呼んでいます。台風に欠かせないのは「温かい海」で、海水温が26.5℃以上で熱帯低気圧が台風にまで発達することができます。このため、海水温が最も高い8月と9月をピークに、日本では7月から10月にかけて台風シーズンとなっています。

一方、緯度の高いオランダ付近の平年海水温は夏でも20℃前後と低く、台風に必要な「温かい海」がありません。ちなみに、発達した熱帯低気圧の呼び名は地域によって異なり、ヨーロッパが面する大西洋では最大風速が約33㎧以上になったものを台風ではなく「ハリケーン」と呼びます。温かい海がないおかげで、オランダはハリケーンの影響を受けにくいという訳です。

オランダの嵐の正体

秋と冬にオランダに荒れた天気をもたらすのは、「温帯低気圧」という「暖かい空気」と「冷たい空気」の両方で構成された低気圧です。この低気圧は北極と赤道の温度差により発生し、温度差が大きければ大きいほど発達します。オランダで秋と冬が嵐のシーズンなのは、南北の温度差が最も大きくなるためです。

同じく中緯度に位置する日本も南北の温度差が大きい場所の一つなので、発達した温帯低気圧がやってくることがあります。晩秋から春先にかけては日本でも温帯低気圧による嵐に注意が必要な季節。台風のように大々的に注目されてはいませんが、実は台風に匹敵するくらいの深刻な被害をもたらすこともあります。

台風でなくても油断禁物

嵐のシーズンが始まるやいなや、9月には大西洋で「Agnes」と令名されたストームが発生し、台風並みの980hpa前後にまで発達して北アイルランドに上陸しました。加えて、先週末は「Babet」と名付けられたストームが英国に洪水など大きな被害をもたらしています。

オランダは英国の背後にあるため、大西洋からくる嵐の影響が比較的少ない傾向にあるものの、2022年2月にきたストーム「Eunice」等のようにオランダにも大きな被害をもたらすことがあります。

嵐のシーズンはまだ始まったばかり。災害から身を守るためには気象情報をこまめに確認することが大切です。

参考:オランダ王立気象研究所(KNMI)、気象庁

プロフィール

竹内青空(たけうち あおぞら)

2021年よりオランダ在住。インスタグラム(@aozora_takeuchi)でオランダの天気や生活について発信中。日本ではウェザーニューズに所属し気象原稿作成やラジオの気象情報を担当、千葉テレビでも気象キャスターとして出演していました