貧困対策に民間ベーシックインカムの試み

オランダの各地で貧困対策として「無料のお金」を提供する民間の取り組みが始まっている。これは政府が最低賃金を保障する生活保護とは別のものである。アムステルダムとロッテルダムでは8人の人が実験的に1年間の間毎月1000ユーロを受け取っている。この実験に参加したアムステルダム住民の2人の子供と暮らすシングルマザーのサッシャさんは「おかげで一息つくことができ、他のことを考える余裕ができた。」と語っている。

サッシャさんは2年前に「コレクティブキャピタル」に参加できる抽選に当たった。この団体は、貧困で生存の危機に直面している人たちを経済的に支援する民間団体である。彼女は仕事があったのだが、低賃金のためいつも金欠状態が続いていた。そして脳卒中に襲われたあとはリハビリに励む毎日だった。「1000ユーロが振り込まれるようになってから、お金のことを心配する必要がなくなり、他のことにも目がいくようになった。友人とコーヒーを飲む約束もキャンセルする必要がなくなった。そして学校から子供の遠足費用の請求書が届いてもストレスを感じる必要がなくなった」と語っている。

この団体「コレクティブキャピタル」では現在3000人に無料のお金を支給している。

オランダでも貧困は問題となっており、2023年には推定83万人(4.9%)が貧困とみなされている。貧困状態にある子供は22万人(6.7%)と少なくない。政府はこの数を2025年までに半数にすることを計画している。

コレクティブキャピタルはお金を支給するだけでなく、バディを呼ばれる人を派遣し、一緒にコーヒーを飲みながら話し相手になる。これで貧困で社会から遮断されていた人も社会とのつながりができる。同団体は「お金を渡して終わりではない。価値ある人生を過ごしてもらうために、人とそして社会と繋がってもらいたい。」と述べている。

ティルブルグとザーンスタットでは別の試みが行われている。150の家族が2年間毎月150ユーロを受け取る。これはホームレスや貧困の人たちを助ける目的で設立された民間の「カンスフォンド(機会を与える基金)」が行っている。

コレクティブキャピタル www.collectiefkapitaal.nl