たまにわコラムその5~愛すべきいい加減さ~
テニスにまつわるコラムをまじかながお届けしていきます。
日本ではテニス協会主催の大会であれ都道府県など自治体主催の大会であれ、たいていの大会要項に「本大会は全選手を公平に扱います」という旨の記載を見つけることが珍しくありません。
もちろんオランダとて参加費は公平ですし、ルールも要項に記載されたものを全試合に等しく適用して行われます。
ところがそこは、やはりオランダというのか、さすがオランダというべきか、幾つかの場面では“適当”だったり、“場当たり的”だったり、逆に“粋な計らい”、と感じる瞬間があり、今日はそれらを取りあげてみました。
【シングルスポール】
シングルスの試合でネットにつっかえ棒のように立てる2本の長い棒、シングルススティックと言ったりもしますが、そもそも普段ダブルスしかやらない方にとっては不要でしょうし、テニス関連の備品の中ではマイナーなものに属するかも知れません。
わたしの経験の限りですが、各地のテニスクラブでシングルスの大会に出た際に、シングルスポールが事前に用意されていることはあまりありません。
通常の大会期間中、一つのテニスコートにはその日に組まれた試合順の都合でダブルスとシングルスのどちらも行われることが多いため、ポールは立てられてなくともネットの脇に置いてあるだけでよいのですが、それすらもされていないことの方が多いです。
たいていは、わたしから大会事務局に「シングルスポールありますか?」と聞いて出してもらうのですが、周りを見るとポールのないまま試合をしているオランダ人も多いです。
ちなみにわたしは普段から、①シングルスポールを立てる②ネットの高さが正しいことを確認する、という2点を練習のときから気にするほうです。
ということもあってか、わたしにとってシングルスポールはルールに則るために必要な備品という位置付けなのですが、オランダの試合ではわりと“適当”に扱われている気がします。
【試合球】
初めてのオランダの大会で試合に入る際にコート番号を告げられ、渡されたボールがセットボール(前の試合などで使われた後の使用済みボール)だったときには、何かの間違いかと目を疑いました。
わたしのテニス歴も気づけばかれこれ四半世紀を数えますが、これまで少なくとも日本では学生時代も社会人となってからも、「公式戦」と言えるような正式な試合ではニューボールを渡された記憶しかなかったためです。
そのときは渋々、渡されたセットボールで試合をしましたが、その後の別の大会であるオランダ人が同様の場面で「ニューボールをくれ」と言って取り替えてもらっている場面を目撃して以来、わたしも真似をするようになりました。
この辺りは交渉でどうにでもなるという、“場当たり的”な対応の一つでしょう。
前回のコラムでテニスクラブ主催の大会参加費が安いと述べましたが、そのわけは試合後のドリンク代で稼ぐだけでなく、ちゃっかりボール代を節約するというオランダ流のおかげもあるのかも知れません。
【センターコート】
オランダではおおよそ10-15面ほどのテニスコートをもつテニスクラブが多い印象ですが、大会期間中となれば、そのコートの多くが大会の試合を消化するために割り当てられます。
その中にはいわば「センターコート」と言えるような、カフェやクラブハウスに最も近くて他の選手や観客が観戦しやすいコートがあり、中には実際にひな壇のように客席が設置されたコートを持つクラブもあります。
大会事務局では、その日の試合の中でレーティングの高い選手の試合や、実力伯仲して面白くなりそうな試合を選んで意図的に「センターコート」に配置するという“粋な計らい”をしてくれます。
コートサイドでサングラスをした人たちがコーヒーを飲みながら試合を見たりおしゃべりしながら共有しているあの空間は、わたしにとってオランダの好きな情景の一つです。