陰謀論について

今回からポートフォリオでコラムを書かせて頂けることになりました。
堂田煙と申します。どうぞよろしくお願い致します。このコラムでは、先週ポートフォリオで取り上げられた記事について書かせて頂きます。

不思議なもので、人間の中にはあらゆる森羅万象の要素が詰まっています。ポジティブなものもネガティブなものも含めて、人というのは様々な断片で出来ているのです。一人の人間の中に右翼も左翼もありますし、裁判官も泥棒もいますし、良い人も悪い人もいますし、差別も偏見もジェンダーフリーも平和運動もあるのです。
高尚で一貫性のある人間になりたいと常日頃思っている私にしても、例外ではありません。おそらく人としておかしな事も沢山書いてしまうと思いますが、どうか見逃して下さいね。仕方ないんですよ。人間だもの。

さあ、失言暴言の可能性についてあらかじめ釘を刺しておいたところで、先週のニュースです。
 コロナウィルスに関するロシアの「偽情報」が拡大、欧州内の対立を深める

コロナに関連して、非常に多くの陰謀説が流布しており、それが欧州間の対立を深めるのではないかと懸念されています。
「ビル・ゲイツがウィルスを作った」「5G電波がコロナ拡大」。
他にも、米国が生物兵器を開発しこの拡大にイランが一役を買っていたり、ビル・ゲイツに今回の世界的コロナウィルス拡大の責任があるといった言説があるそうです。
オランダでも約15パーセントの人がそれを信じている、と記事にあります。

私も全部信じています。
私にはそうした陰謀論を頻繁に投稿するフェイスブック友だちがいるのです。彼女のアップする記事は義憤に満ちた面白いのばっかり。毎回楽しみにしています。
なかでもビル・ゲイツ氏のくだりは良いですね。
この世で一番金を持っているゲイツ氏が、コロナワクチンでもって更に儲けようとしているらしいのです。むしろ儲けようとしてわざとウイルスを漏洩させたんですって。武漢のウイルス研究所にCIAを派遣して。
 
本当かどうかは別として、ビル・ゲイツ氏の悪口には心が踊ります。
なんといってもビル・ゲイツ氏の個人資産はいまの時点で11.2兆円。ひと月の自粛で家賃が払えなくなる人が続出する世の中で、ひとりで11兆円持っているのです。
私はいま0.2兆円を端数として切り捨てましたが、0.2兆円ていくらよ?端数すら日常生活に出てこない桁だから、わかりませんよ。
・・・いいなあ。ゲイツ氏は一生困らないんでしょうね。
私を含め、オランダにいる15パーセント程度の人の心は嫉妬で真っ黒。
そしてその真っ黒になった心が、さらに多くの人々に彼の陰謀論を広めていくのです。この陰謀論は別の陰謀論のうねりを呼び、爆発的に広がる可能性を秘めています。習近平やファウチ博士も巻き込み、いったい、どこまで広がるのでしょうか。
ご安心ください。どこまで広がってもゲイツ氏なら大丈夫。
なにしろ彼、11兆持っていますから。

それは置いておいて。
あらゆる陰謀論は、事実とは異っても、真実の一端ではあると思います。
そういった陰謀論が出てくるのは、「現象のおかしさ」「構造の歪つさ」「論理の不公平さ」「存在の不平等さ」が現実にあるからです。
市井の人々が社会や事件に対して「何だかおかしい」と思って、でも証拠も事実も何も出てこないところで何とか答えを見つけようとすると、陰謀論みたいなものに行きつくのではないかと思うのです。
大切なことは、陰謀の内容そのものではなく、「その陰謀論を人々に信じさせたものは何か」です。陰謀論の背後には、正しい世の中を希求する人々の苦しい叫びが、往々にして隠れていたりするもので、それは検討すべき何かですよ。
陰謀論とは、人々の問題意識の鏡なのです。
それはともかく、「ロシアが陰謀論を流布させている」というのも陰謀論であるあたりに、ポートフォリオのメタ構造の闇を感じる今日この頃です。粋ですねえ。
言わずもがなですが、私はこの陰謀も信じています。

このコラムを始めるにあたり、ポートフォリオ側から、「何を書いてもいいけれど、極論や陰謀論は出来ればやめてほしい」と控えめに釘を刺されておりました。
にもかかわらず、どうして陰謀論から始めたのか、自分でもわかりません。きっとポートフォリオが先週、陰謀論の記事を載せたからでしょうね。
このコラムの責任の一切は私にありますが、今回に関してはポートフォリオにもあるということを特記した上で、今回は終わりたいと思います。