オランダあれやこれや

いろいろな人が書くオランダにまつわるエッセー。書き手、常時募集しています

#BLMを通してみたオランダ
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人権問題にも敏感なオランダ。#Black Lives Matterのデモはではやはりという感じでいろいろな都市で催されていますね。
コロナが無かったらきっともっと大規模なデモになったのだろうと思うのですが、それでもアムステルダムやロッテルダムで行われたデモの映像を見て思わず「うわーっ」となりました。うわーっというのは、大丈夫なんだろうか、という感覚です。何が大丈夫なのかってこのご時世、もちろんコロナ感染拡大は大丈夫なんだろうか、です。
Black Lives Matter、人種差別反対。公権力による暴力も反対。21世紀なのにこんなデモをまだ繰り返さなければならない世の中に怒りを表明。デモ参加者の言葉はどれもこれも全くその通りだと思います。私も普通の状況だったらデモに参加して、一緒に歩いていたかもしれません。でも今回はしませんでした。やっぱりコロナが恐いからできなかった。買い物に行くのでさえ、人があまりいない朝8時ころに人を避けるかのようにしてスーパーの通路を早足で歩き、とにかく買い物だけを済ませてそそくさと家に帰るということを3か月ものあいだ繰り返してきた身には、あんなに人のいるところに出かけていくのはちょっとどころか大変気が引けました。TVニュースで見るデモの群衆には、気持ち的にはとても共感ができるが故、そんなに密集しちゃダメだろう、という批判の気持ちより、大丈夫なの?ねぇ本当に大丈夫なの?病気移っちゃうんじゃない?気をつけてねという心配の方が大きいです。デモ参加者を見ているとやはり若い人が多いので、若者は感染の恐怖などあまり感じないのかなぁと、感染リスクグループの仲間入りをしている私は自分の歳を感じちゃったりもしています。

オランダでの#BLMの抗議行動はTV画面を通して見ている分にはかなり平和的に行われた/行われているのではないかと思います。他の国で見られるような略奪行動や警察に対する暴力は無いようでホッとします。日ごろからオランダの警察官ってフレンドリーだと思いませんか?私の経験では、例えばゲイプライドの時やティルブルグのRoze Maandagのケルミスで警備にあたっている警官たちは本当に親切でちゃんと仕事してるの?と聞きたくなるくらい緩ーい感じで、自分たちも楽しんでいる様子を微笑ましく見ています。街中で時々見かける騎馬警官や、いわゆるチャリンコおまわりさんなんかも、頼めば気軽に一緒に写真に入ってくれました。民衆と警察との垣根が低いからでしょうか、民衆の怒りは警察権力には直接向いていないように感じます。これもオランダ社会の特徴であるフラットさの表れでしょうか。デモに便乗した商店での略奪も無いようだし(#BLMと関係ない商店略奪のニュースは時々目にしますが)、デモ参加者はあんなに嫌いなはずのマスクをきちんと着用し、1.5メートルのソーシャルディスタンスを守りながら、静かに行動しているように見えます。オランダ人って日本人的視点から見ると自分勝手で、人がどう言おうが自分は自分、マイペースをあくまでも貫く、というのが基本にあると思うのですが(かなり偏見入ってるかな?)、わりと決まりを守る人たちだったんだなとなんか変な風に感心してしまっている今日この頃です。

憲法で保障されているデモや集会の自由 vs. コロナ感染拡大防止のための行動基準とどちらが優先されるべきなのか、ということが国家の一大事のようにして連日議会やメディアからSNS上でも論じられているのを見て、これもオランダらしいなと思っています。この問題は憲法vs. 緊急時の特別対策であったり、基本的人権 vs. 政府の指示であったり、集会の自由 vs. 公衆衛生であったりで一概にどちらが正しいと決めるのは大変難しい問題だと思います。また、増え続けるデモ参加者を目の当たりにしながらデモを解散させなかったアムステルダム市長の行動に対しても賛否両論が渦巻いていました。これを見ていて完全に#BLMから問題点がシフトしてしまったなぁと苦笑しつつも、冷静に議論が戦わされている事にひたすら感心します。オランダ人の皆さんは自分の意見を自信を持っていつもハッキリと述べていらっしゃる。前述の「人がどう言おうが自分は自分」が根底にあるのでしょうし、子供の頃から明確に意見を言うように教育されていて、周りの大人も子供扱いしないで子供の発言に耳を傾けて対等な立ち位置で意見を返すという育てられ方をしているとこういう風になるのだなぁと感心だけではなくて羨望の思いです。オランダ人と議論するといつも言いまかされてしまう自分のディベート力を情けなく思い、つい日本の教育に文句の一つや二つも言いたくなってしまいます。

#BLM関連でもう一つ。やっぱり出てきたZwarte Piet問題。オランダで人種差別問題が語られる時に必ず出てくる問題がこれ。ポートフォリオさんでも取り上げられてますが(http://www.portfolio.nl/news/buz/show/3103)、今回はルッテ首相の議会での発言が発端となっていつもは冬になると始まる議論が夏のこの時期に始まりました。これも#BLM運動がもたらしたオランダ国内の地域限定現象で面白いなと思ってます。もちろんZwarte Piet問題はただ面白がって論じをられるものではないのですが。

コロナですべての動きが停滞していた世界ですが、規制緩和と時を同じくした#BLMをきっかけにしてオランダでも一気にいろんなことが起こって目まぐるしく感じた6月初旬でした。