富裕層にある選択の自由、貧困層にはない。オランダ社会の分断顕著に。
オランダが平等で福祉国家だというのは過去の話だ。ここ10年間でこの神話は完璧に消滅し、貧富の差はますます激しくなるだけでなく、富裕層とそうでない層の交流もほぼなくなっている。富裕層は人生の選択肢が多いが、貧困層はこれがない。社会文化計画局(SCP)が行った調査の結果である。
SCPは「政府はあらゆる方法でこれに介入し状況を改善すべきだ」と結論づけている。これまで貧困層については調査が行われてきたが、富裕層と他の層との交流についての調査は今回が初めてだ。
社会福祉が充実していた時代には、誰もが老人施設に入居できたが、今では在宅が基本。ただ富裕層は高級施設に入居し介護も受けられる。他の人々は介護施設に入るためには数年待たねばならない。
また教育でも同様だ。学校の教育指針ややりかたに満足できない親は、子供を小規模で教師の数も十分な私立の学校(プライベートスクール)に送っている。 そしてその数は増える一方だ。お金に余裕がない層にはこれができない。教育はその後の健康、収入、職業選択などに影響を与えるという調査結果もあるので悲観的になる。
SCPによるとこの貧富の差の広がりは、急激に高騰してきた不動産価格も一因にあるという。以前は高級住宅地や運河沿いの住宅にも、政府の助成金によるいわゆるソーシャルハウスが混ざっていたが、富裕層はこれを嫌がり富裕層だけが住む地域に移っている。こうして社会の分断は深まる一方となる。SCPはソーシャルハウジングの充実が不可欠だとしている。