オランダは洪水対策にどれだけ備えているか

アムステルダムは洪水対策にどれだけ備えているか?—ウィーンの成功事例に学ぶ

欧州の都市では気候変動によって洪水リスクが高まり、最近のスペインでの豪雨被害はその一例だ。しかし、オーストリアの首都ウィーンは9月の嵐「ボリス」による洪水をほぼ無傷で乗り越えた。この成功は、ウィーンが長年にわたって積み重ねてきた洪水対策の成果といえる。アムステルダムも学ぶべき点があるのではないだろうか。

ウィーンの洪水対策

ウィーンの洪水対策の中心には、ドナウ川沿いに設置された「ドナウ島」と「新ドナウ運河」がある。これらは1970年代に建設され、洪水時には運河の水門を開放して大量の水を流し込むことで、ドナウ川の水位を管理している。これにより、ウィーンは過去の洪水災害を避けることができた。また、年間約6000万ユーロを洪水管理に投じ、高水位予測システムや緊急サービスの訓練も行っている。この成果は経済的にも効果的で、投資額を上回る被害を防いできたとされる。

アムステルダムの状況と課題

一方で、アムステルダムの状況は異なる。平坦な地形とポルダー(干拓地)システムにより、ウィーンのような急流による洪水ではなく、主に雨水の溢れによる浸水が懸念されている。そのため、アムステルダムでは「都市をスポンジに」という考え方で、地表の緑化や地下の貯水施設の設置、雨水の再利用などを進めている。また、アムステルダムの洪水対策は堤防や水門といった防護施設の強化に重点を置いている。

2023年の調査によると、アムステルダムにはさらなる改善の余地があるとされる。避難計画においても、人口の高齢化や自動車保有率の低下を考慮した新たな取り組みが求められている。特に、高い場所への垂直避難の導入が提案されている。

欧州の他都市の洪水対策

ハンブルクやコペンハーゲンなど、欧州の他の都市も洪水対策を強化している。ハンブルクの新しい住宅地「ハーフェンシティ」は海抜8.5メートルの人工丘や、緊急時に公園が水を蓄える「貯留地域」を備えている。コペンハーゲンも豪雨後に「緑の道路」や水を湖や港に流す設備を導入し、洪水への備えを進めている。

気候変動に備えた都市づくりの必要性

気候変動の影響で極端な天候が頻発する中、欧州各地の都市は、住民の安全を確保するために洪水対策を強化している。アムステルダムにとって、ウィーンの事例はその対策のヒントとなるだろう。