オランダで理学療法士の資格を取りクリニックで働く平出さん

オランダで理学療養士の資格を取りクリニックで働く平出さん

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 日本の大学にてスポーツ医学・コーチングを学び、オランダの理学療法士養成校にて理学療法士の資格を取得。現在アムステルフェーンのクリニックで働くほか、サッカーチームのメディカルスタッフとしても活躍する平出康彦さんにお話を伺いました。

P: オランダにいらしたきっかけをお話いただけますか?

H: 今から9年前の2010年に筑波大学の体育学部を卒業しました。筑波大学ではスポーツ医学を学び、サッカー部でトレーナーをやっていました。その後の就職を考えたのですが、窓口は狭く専門的な仕事をするにはさらに専門資格を取らねばならないという現実に突き当たりました。医療資格や鍼灸の資格、あるいは柔道整復師といった資格です。そんな中、オランダでは理学療法を学ぶ中で、スポーツに関連したリハビリを学べるということを聞きました。オランダはサッカーの国。オランダで学ぶということもありかもしれないと学校を調べたりと可能性を探りました。オランダにはすでに理学療法士として働く先生方もいらっしゃることも知りました。

P: それですぐにオランダに?

H: はい。言葉もわからず無謀かもしれなかったのですが、とにかくスポーツのリハビリをやりたいという思いのほうが強くオランダの専門学校入学を決めました。学校はユトレヒトに近いニューウェへインにある私立のティム・ファン・デル・ラーンという理学療養士の養成学校です。ここは大学卒業の証明書があれば外国人でも入学できます。

P: でも、すべてオランダ語で授業するのですよね?

H: はい、最初の半年間はオランダ語を学び、その後すぐに授業に向かいました。最初はまったくのチンプンカンプンで授業についていくのに必死でした。その上最初からディスカッションやら患者さんとのコミュニケーションのシミュレーションなどをやるため、語学は必須となりました。それでも周りの学生は親切で助けてもらうことも多く、最初の2年間は大変でしたが3年目後半からは追いつけるようになりました。留年は2回して、本来なら4年で卒業するところを6年かかりましたけど。 勉強ばかりの日々でしたが、日本人のフットサルグループで選手をやったり、FCユトレヒトのユース部門で週末にスポーツトレーナーとして研修をしたりという活動もしていました。

P: 学校を無事卒業したあとの仕事探しはどうでしたか?

H: 2016年10月に無事に卒業し資格を取得しました。その後すぐにフリーランスのビザを獲得しましたが、仕事を探すのは大変でした。50社以上に履歴書を送りましたが、良い返事は返ってきませんでした。やはり外国人がオランダ人と同じ土俵で戦うのは大変だとつくづく感じました。2017年にアムステルフェーンのフィジオセラピーのクリニックで仕事を始めることができ、さらに同年3月に女子サッカー一部リーグに属するFCアルクマールで仕事を得ることができました。現在ではアムステルダム北部のスポーツジムでもフィジオセラピストとして働いています。

P: 現在アムステルフェーンでは日本人向けに治療をされているのですか?

H: オランダ人の患者さんもいますが、日本人の患者さんのほうが多いです。オランダの資格をもっていますので他のオランダ人の理学療法士と全く同じ条件で働いています。スポーツ中の怪我だけでなく、日常生活で生じた不調も治療します。施術だけでなく、トレーニングや日常生活のアドバイスも行っています。他の専門医と違いホームドクターを通さず直接来ていただくことができるので便利だと思います。オランダの健康保険で理学療法も含まれるものなら、保険が適用されます。駐在員のかたに多い国際保険もほとんどが適用されています。

P: フリータイムにはどんなことをなさっているのですか?

H: 週末にはJ-Dreamという日本人の子供のサッカーチームのコーチをしています。本も結構読みます。料理も好きなのでよくやります。今はまっているのはリゾット。ポテトサラダもよく作ります。でも一番好きなのはご飯と味噌汁かなあ。(笑) それと9月から行こうと計画している大学院の入学準備などで忙しい日々を送っています。マニュアルセラピーと呼ばれる分野を学びます。首や背骨に関連した疾患に特化した分野になります。」このマニュアルセラピーを学ぶには理学療法の資格を持っているというのが条件になっているので、一段上の勉強になります。

P: 理学療法の資格を取るだけでも相当な苦労をなされたのに、もっと勉強ですか?

H: マニュアルセラピーを学ぶことで自分の治療の幅を広げることが目的です。スポーツ現場でもその需要が高まっており、自分のキャリア形成にも必要だと考えています。 大学院はパートタイムの授業のみなのですが3年かかります。オランダ中にいくつかある大学院の中で、現在検討している学校は東部のアメルスフォールトとさらにもっと東でドイツ国境に近いエンスヘーデにあり、どちらにしようか迷っているところです。たぶんエンスヘーデのほうが良さそうなのですが遠いのが難です。 そして学校に通うにはより条件の良い職場が必要で、今こちらの就職活動もやっています。3年前とは違い今ではいくつかの職場から誘いが来るようになり、それぞれと話を進めながら検討しているところです。

P: 将来の展望をお聞かせください。

今後の展望として考えているのは、オランダのサッカー界で出来るだけ高いレベルのクラブで活動できるようになること、マニュアルセラピーの大学院を修了することですね。どちらも5年以内には実現できればいいなと思っています。ですのでもうしばらくはオランダに残る予定です。もちろん日本に戻って日本のサッカー界で働くこともやってみたいことの一つですが、まずはオランダで行けるところまでキャリアを築いて、興味のある分野やコースを一通り学んで、現実的に考えるのはそれからだと思います。働きながら学べるのがこの国の良いところですので、学べるだけ学びたいと考えています。

平出さん連絡先