基本学力低下を挽回するためのオランダの新しい教育方針

オランダの学校教育、新しい「学習到達目標」を導入

オランダでは2027年度から、幼稚園から高校までの学校教育で、「何を最低限学ぶべきか」を定めた新しい学習到達目標(kerndoelen)が導入される。これまでの基準は2006年に作られたもので、現在の教育や社会の変化に対応できていないうえ、特に読み書きや計算能力の低下が問題になっていた。

15歳のオランダの生徒は、読解力で欧州ランキングの最下位に位置しており、政府は新しいカリキュラムによって状況を改善したい考えだ。

2006年の基準は「曖昧すぎた」

新しい基準では、分数や百分率の計算、身近な植物の識別、洪水対策など、具体的に身につけるべき知識や能力が示される。

一方、旧基準は「学校や教師に自由を与える」ことを重視した結果、内容が抽象的で、学校がきちんと実施できているのか評価しにくいという問題があった。

また、2006年当時にはスマホもなく、Brexitやネット上のフェイクニュースの拡大も想像されていなかった。そこで、AIやグローバル化など現代社会を反映した教育へと見直される。

読解力は「国語の授業だけ」の問題ではない

新カリキュラムでは、読み書きの能力をすべての教科で育てることが重視される。数学の教師も、生徒が読む教科書や文章をどう理解するかを意識することが求められる。

また、単に「読解問題」を大量に解かせるのではなく、文章を本当に理解すること、そして実際に質の高い文章を書くことに重点を置く。

市民教育とデジタル教育も重視

新しいカリキュラムでは、市民教育(民主主義や社会の一員としての知識)とデジタル・リテラシーの位置づけも大きくなった。

ただし、それらを特定の教科だけで扱うのではなく、例えば歴史の授業で民主主義の成立を学ぶなど、さまざまな教科を横断して学ぶことが想定されている。

学校には最大5年間の移行期間が与えられ、2026年度はまず国語、フリース語、算数・数学から新基準が始まる。その他の教科については来年度から導入される。

新しい基準だけで学力が上がるわけではない

専門家は、新しい学習到達目標を「万能薬」ではなく、教育の方向を示すコンパスだと説明する。

学力を向上させるには、優れた教師や教材、十分な授業時間、そして生徒が読みたい本を選べる充実した学校図書館なども必要だ。

また、オランダでは教育時間の約30%は必ずしも国の学習到達目標に充てる必要がなく、学校が独自の教科やテーマを設定できる。

専門家は、教師が目の前の生徒に合わせて柔軟に教えることも重要だと指摘する。例えば、クラスで生徒同士のけんかが起きたり、新しい生徒が入ってきたりしたとき、それ自体を社会性や他者との関わり方を学ぶ機会にすることができる。

つまり今回の改革は、全国の生徒に「同じことを同じように教える」ことを目指すのではなく、現代に必要な基礎学力を明確にしながら、教師や学校の裁量も残すというバランスを狙ったものだ。