セージのコラムVol. 16 旅の途中 WorldPride Amsterdam 2026

アムステルダムの夏の風物詩としてPrideを外すわけにはいかないでしょう。

ということで、今年も8月最初の土曜日に開催された運河パレードに行ってきました。

というか、この2年はボートに乗る側だったのですが、今回は観客の一人として全ボート80隻を最初から最後まで、しっかりじっくり堪能させてもらいました。

今年は例年とは違い、“World”の冠がつく記念イベント。2年ごとに世界の各地で代わる代わる行われるWorldPrideは、アムステルダムでの開催は初めてで、世界中からより多くの人がパレードにも集まったようです。

  1. 圧巻の観覧席

また最初で最後の試みとして、運河パレード時にはこれまでにはない本格的な観客席の設置がありました。ライツェストラート近くの一角が300メートルにわたり締め切られ、両岸に1万席規模の観客席を即席で設置したのです。

座席は大きく分けて2種類。座席オンリーと飲食オール込み。気がついた時には座席のみの枠は売り切れでした。

とてもいいお値段設定だったのですが、生涯に一度きりの謳い文句に乗せられて、清水の舞台から飛び降りる心境で飲食オール込みのチケットを購入しました。

実際支払ったのは一人あたり€250だったのですが、購入時にはそれはそれは躊躇しましたが、後から振り返るとあれだけのことをこの金額で販売してくれたのは奇跡に近いのではとさえ思います。

準備にどれだけの時間が掛かったのか知る由もありませんが、当該地区の車や自転車を全て撤去して、あれだけの設備を突貫工事で設えて、当日は5000名規模への飲食の提供、トイレやゴミのスペースを確保して…というのを考え合わせると、それほど無謀な価格設定ではなかったと思えます。

  1. 飲み物も準備オッケー!

飲食の飲はもちろんアルコールも含み、ワインも飲み放題。食の方は、キャビアのような高級食材はもちろんなくて、ホットドック、チキンポケ、ベジタブルラップの3種類でしたが、それなりにどれも美味しかったです。

入場時にはウェルカムシャンペンとクロワッサンが振舞われ、配布されたウェルカムバッグはピンク色のキュートな保冷バッグで冷たい水やソフトドリンク、スナック類にキャンディ、ニベアの日除けどめが詰められていました。ショーが始まると常時保冷容器を背負ったスタッフがこまめに客席の間を回り、冷たいビールやソフトドリンク、日が照るとアイスキャンディを配ってくれてたのも気が利いていました。

  1. ウェルカムバッグも準備オッケー!

さてさて、いつになく晴れ間が広がって汗ばむ陽気の中、パレードが始まりました。

このPride、私が参列し始めた30年前ほどの当初はどちらかと言うと、半裸のマッチョの男性達が肉体美を見せつけるエロチックなシーンが多かったと思います。

その後、企業がこれ見よがしに自社のフリーダムさをアピールする場に利用しているのがあざとく目に映り、多少辟易とする時期もありました。

また、当事者とは関係のなさそうな、自己満足だけのストレートの人たちがただただピンクの服を来てパーティを楽しむだけの、なんだか本題とは関係のない、慈善を押し付けてる感のある方々が主役を演じているような時期も経てきました。

が、昨今のシーンはとても様変わりしています。子連れの家族ももちろん楽しめるようなマルチチャンネルなスタイルに様変わりしました。

そして今年はどちらかと言うと、メッセージ性の強いボートが増えていたように思いました。大音響のBGMもなしに、ただただ沈黙の中パネルを表示して、検閲による言論の自由の侵害を訴える出版界のボート。

  1. BGMなしの異例な演出

聴覚障害の聾者のボートも観客から熱い拍手を送られていました。

  1. 聴覚障害者のボートには特に熱い声援が

移民擁護やFree Palestineのボートも。

今年は同性婚が世界で初めてオランダで認められて25周年の記念イヤーでもあり、結婚をテーマにしたボートもいくつか見受けられました。

  1. 純白のコスチュームがキュート

実際に結婚を執り行うボート。レインボーカラーの煙幕を手にしたドラァグクィーン達が誇らしげに煙幕を掲げる姿が神々しかった。

  1. レインボーの煙幕

黒いマントに身を包んだメンバーが、コートを脱ぎ捨て純白のウェディングコスチュームに早変わりして、軽やかなリズムに乗って踊り、最後は、“同じ愛、同じ権利“のパネルを掲げてメッセージをアピール。

  1. もはやショーとして完成されていました

警察や消防署、軍隊もそれぞれユニフォームを着た職員が誇らしく自由をアピールしていました。

  1. ユニフォーム組は勿論それだけで大歓声が

長い年月を重ねて、そろそろ円熟味というか、しっかりと当初の意義に立ち返った感、“Pride”の意味をじっくりと思い描けるパレードだったと思います。

参加する側も見る側も、それぞれの立場から“Pride“を、今年のテーマである“Unity”(団結)を考え、シェアし、リスペクトするとても素敵なパレードになりました。

パレードに先立ち、新教会では”Queer Amsterdam”と題するオランダにおけるQueerの歴史、どうやって権利を勝ち取ってきたのか説明展示がありました。(展示は来年の4月4日まで続く予定)25年前に世界で初めて同性婚を公に認めたオランダも、そこまでの道のりは決して平坦ではありませんでした。

80年代に始まるエイズの恐怖はそれまで順調に上向きだったクィアへの理解が何歩も後退した時期でもありました。

そうして勝ち取った結婚という権利、その反面様々な差別は続きます。また、アメリカのように長い時間をかけて向上してきたDEI(Diversity(多様性)、Equity(公平性)、Inclusion(包括性))の精神も、たった一人の独裁者の登場でずっとずっと後戻りしている現実もあります。日本も同性婚を認める実際の国民の賛同の声の多さに対して、政府の腰は重いままです。

Prideの闘いは性的マイノリティだけのものではなく、社会のあらゆる差別や迫害、ヘイトに反対するムーブメントです。

世界のあちこちが直面する分断という脅威に立ち向かう術として、クィアコミュニティは敢えて“Unity”という選択をしたのです。

80隻のボートは、法曹界のUnity、教育者のUnity、警察の、軍人の、あらゆる団体が団結を表明し、立ち向かう決意をしたパレードでした。

そしてそれを見届けた何百万人もの観衆もがまさに一体化してその決意を分かち合うパレードとなりました。

World Prideは期間を延長して、例年は1週間の会期を2週間に伸ばし、特別な催し物も繰り広げられました。

その中の一つは、“Pride“をユネスコの世界無形文化遺産に推す取り組みもありました。“Pride”のイベントは今でこそ世界中のあちこちで、日本でも東京や名古屋でも毎年イベントを開催するようになっています。(賛意のある方はどなたでも電子署名に参加できます。https://pride.amsterdam/en/unesco/) 

日本からもMarriage For All Japanのメンバーがパレードやイベントに参加して、日本での同性婚の実現に向けて色々な取り組みをされていました。(https://www.marriageforall.jp

このPride Amsterdamのイベントは毎年8月の第1週を中心に行われます。来年からは通常モードに戻りますが、愛や自由や平等を謳歌し、共感する祭典、皆様も是非参加してみてください。

最後にQueer AmsterdamがWorldPride開催に当たり発表したハウスルールの第一節を転載します。

“私たちは、オランダ憲法第1条で定義されているいかなる形態の差別も容認しません;「オランダにいるすべての人は、平等な状況で平等に扱われます。」宗教、信条、政治的所属、人種、性別、障害、性的指向、またはその他の理由による差別は許可されていません。“  

  1. ホームレスピープルのボートには度肝を抜かれました。“3000人のクィアがアムステルダムで屋根のない生活をしています。“

(文と写真 by セージ)