オランダの闇、犯罪組織の影響

オランダの戦略的知識センター「Ondermijnende Criminaliteit(社会浸食型犯罪)」の報告書によると、犯罪組織が地域社会や政策決定への影響力を強める一方で、政府による監視や統制は弱まっていることが明らかになった。

報告書では、不動産、運輸、医療、飲食業、小売業などに犯罪が浸透し、合法経済と犯罪経済が並行して存在する「並行経済」が形成されつつあると警告している。このままでは「国家の中にもう一つの国家」が生まれる危険があるという。

犯罪組織は目立たない形で社会に入り込み、社会基盤を徐々に蝕んでいる。これに対し、報告書は自治体に問題地域の不動産を優先的に購入できる権限を与えることや、不正を犯した公務員が容易に転職できない仕組みづくりを提案している。また、暗号資産の追跡強化や、有罪判決がなくても犯罪由来の資産を没収しやすくする必要性も指摘した。

調査では、犯罪組織の34%が10年以上活動を続け、影響力を維持していることも判明した。さらに、政府への信頼低下が犯罪組織に有利に働いていると分析している。市民が法律を守ったり不正を通報したりする意欲が低下すると、犯罪組織が活動しやすくなるためだ。

また、犯罪組織が住宅や医療、保護など本来は社会保障が担う役割を代替し、市民を依存させているケースもあるという。2023年のファルケンブルフ洪水では、公的支援が遅れる中、資金難に陥った飲食店経営者に犯罪組織が資金援助を行い、その後マネーロンダリングや麻薬取引への協力を求めた例が紹介されている。

若者の保護も重要課題として挙げられた。犯罪組織は、逮捕時の法的リスクが比較的低い若者を「安価で代替可能な労働力」として利用している。特にSnapchatなどのSNSでは、数万人規模の若者グループに「簡単な仕事」を持ちかける形で大規模な勧誘が行われているという。

この調査は、犯罪が社会に与える影響を把握するため、オランダ司法・安全保障省の依頼で約2年かけて実施された。