元オランダ首相ルッテNATO事務総長、トランプ氏に「ご機嫌取り」

NATO事務総長で元オランダ首相のマーク・ルッテ氏は、ハーグで開催されたNATO首脳会議で、ドナルド・トランプ大統領を満足させるために、あらゆる手段を尽くした。
ルッテ氏はかなり露骨かつ公然と譲歩した。NATO首脳会議に向かうトランプに対し、「ヨーロッパは莫大な支出をする。これはあなたの勝利だ」とSMSを送ったのだ。このような内容が表に出るのは極めて異例で、しかもそれはトランプ自身によるリークだった。
今回の会議では、欧州諸国とカナダがNATOの費用をより公平に分担するため、今後2035年までにGDPの5%を防衛に充てることを約束。これは長年アメリカが不満に思ってきた点であり、実現に至ったのはトランプの圧力が大きい。
ルッテの“ご機嫌取り”は彼の得意とする手法であり、場の空気を読み、誰とでも親しく振る舞うのが持ち味である。ただ、今回はやり過ぎだったのではないかとの懸念もある。「恥ずかしくないのか?」との問いにルッテは「好みの問題だ」と答えた。
一方、NATOの根幹である「第5条」(加盟国への攻撃は全体への攻撃と見なす)について、トランプが「複数の定義がある」と発言したことが波紋を広げた。ウクライナのゼレンスキー大統領は、「5年以内にロシアがNATO加盟国を攻撃する恐れがある」と警鐘を鳴らしている。
エストニアの首相も、「我々はプーチンの本質を知っている。以前は誰も信じなかったが、今やロシアはウクライナを占領している」と発言。NATO加盟国間の団結の重要性が改めて浮き彫りになった。
一方、数か月前にはトランプがゼレンスキーを冷遇し、プーチンが得をしたとされたが、今回の会談では「非常に良い会話ができた。彼は勇敢に戦っている」と、トランプは評価を一転させた。
ルッテは「トランプとは10年来の友人で、信頼している」と語ったが、その“友好”がどこまで続くかは予測できない。ルッテは「トランプは力強く、同時に平和を望む男だ」と述べ、今回もうまく“なだめる”ことに成功した形となった。