オランダはテック企業に向かない? 税制や労働規制が足かせに。

テクノロジー企業「Bird」(旧MessageBird)は、オランダの厳しい規制環境を理由に、アムステルダムの拠点を大幅に縮小することを決定した。同社の創業者でありCEOのロバート・フィスは、「オランダではもはや競争力を維持することができない」と述べ、事業の中心を海外に移す決断を下した。現在、同社のアムステルダム拠点には約240人の従業員がいるが、今後はニューヨーク、イスタンブール、ドバイ、ヴィリニュスなど世界7か所のオフィスに分散され、オランダには約40人のスタッフのみが残る予定である。Bird社は2011年に設立され現在の市場価格は36億ユーロ.
オランダの規制がもたらす課題
フィス氏は、オランダの労働規制と税制が、テクノロジー企業の成長を大きく妨げていると指摘する。例えば、GoogleやFacebookなどのグローバルテック企業が採用しているストックオプション制度(従業員が会社の成長に伴って利益を得られる仕組み)が、オランダでは税制上ほとんど機能しないため、有能な人材を確保しにくいという問題がある。
さらに、オランダの厳格な解雇規制も、テクノロジー業界の変化の速さに適応できない要因とされる。「テクノロジー業界では、状況が日々変わるため、企業は迅速に人員調整を行う必要がある。しかし、オランダの規制ではそれが難しく、企業の柔軟性が損なわれる」とフィスは説明する。
AI導入と雇用の変化
BirdはすでにAIの導入を進めており、昨年90人の従業員を削減した。「AIによって多くの仕事が失われるのは避けられない」とし、オランダがAI開発に対する支援を強化しなければ、さらなる競争力低下を招くと警鐘を鳴らしている。一方で、同社はAI分野の新たな雇用を生み出し、テクノロジーの進化に対応しようとしている。
オランダの「知識経済」としての未来
フィス氏は、「オランダ政府は『知識経済の発展が重要』と言うものの、実際にはそのための政策が伴っていない」と批判する。特に、人工知能(AI)や高度なテクノロジー分野での規制が厳しく、結果として有能な人材や企業が国外へ流出していると指摘する。
また、フィス氏は「ヨーロッパ全体がAIの分野で世界に大きく遅れをとっているが、オランダはさらにそれ以上の後れを取っている」と述べ、オランダの将来に対する懸念を示す。同社は今後、ヨーロッパでの拠点をリトアニアのヴィリニュスに一本化する計画である。
創業者の決断とオランダへの思い
創業者フィス氏自身はオランダ・アムステルダム出身であり、「できればオランダで事業を続けたい」という思いがあったものの、企業の将来を優先せざるを得なかったと述べる。「感情的にはオランダに残りたいが、Birdの未来を守るためには最善の選択をしなければならない。それがオランダを離れる決断につながった」と語る。
オランダで誕生したBirdは、今や世界的なメッセージングプラットフォームへと成長し、昨年は50億件以上のメッセージを配信した。しかし、フィス氏は「今のオランダでは、新しいテクノロジー企業を育てる環境が整っていない。今の若い起業家なら、アムステルダムではなくベルリンやパリ、あるいはアメリカを選ぶだろう」とし、オランダのビジネス環境の厳しさを改めて強調している。