激動のオランダ政界、2024年を振り返る
2024年、オランダでは極右自由党(PVV)が2023年末の選挙で大勝し、政権交渉の主導権を握った。反イスラムを標榜していた党首ウィルダースは、イスラムのみならず一般の移民・難民政策に焦点を絞った厳格な方針を掲げた。連立政権は自由党、VVD、BBB、NSCの4党で結成され、それぞれが農業、司法、財政、移民分野で成果を挙げた。だが、交渉の過程は険しく、政権内の不和が早くも表面化している。
首相には無所属で政治経験なしのディック・スホーフが就任した。スホーフは長年の経験を持つ官僚だが、初の議会演説でウィルダースから「優柔不断」と批判された。さらに、NSCから閣僚が辞任するなど、連立の結束力は脆弱だ。特に移民政策を担当する自由党のファーバー大臣は、政策の停滞や内部対立が原因で孤立しているとの声も上がっている。
ウィルダースは国内政策だけでなく、国際的な舞台でも影響力を発揮しようとしている。ゼレンスキー(ウクライナ)やオルバン(ハンガリー)、ルペン(フランス)、サルヴィーニ(イタリア)らと接触し、移民流入反対の動きを欧州全体で広めようとする姿勢を見せた。イスラエルのネタニヤフ首相との会談は物議を醸し、議論を呼んだ。
一方、連立政権内では移民政策や財政をめぐる対立が続いている。議会ではNSCと他党が鋭く対立し、ウィルダースが仲裁に動く場面もあった。スホーフ首相は「実行あるのみ」と強調するが、次の予算調整や議会での議論が新たな障害となることは避けられない。
オランダの政権は不安定ながらも、政策実現に向けて進んでいる。だが、内外の圧力や連立内部の亀裂が続く限り、未来は依然として不透明だ。