【お天気コラム】夏の暑さの違い

日本の夏とオランダの夏の違い

まるでサウナにいるような蒸し暑い日本の夏。一方、オランダの夏は涼しい日が多く、時にはヒンヤリと感じることさえあります。この二つの国の夏の暑さには、いったいどれほどの違いがあるのでしょうか?データをもとに詳しく比較してみましょう。オランダの夏の秘密に迫ります。

気温の違い

【図①】

東京の7月と8月の最高気温(平年)はそれぞれ29.9℃と31.3℃。一方、オランダのDe Biltでは、7月が23.1℃、8月が22.9℃で、これは東京の5月中旬と同じくらいの気温です。5月と言えば、新緑が美しく、一年の中で最も爽やかで心地よい季節だと感じる方も多いのではないでしょうか。それを考えると、オランダの夏がいかに過ごしやすいのかがよく分かります。

【図➁】

また、最高気温が30℃以上の日数(平年)を比べると、東京では7月が16.8日、8月は22.6日。対してオランダは7月が2.0日、8月が1.9日です。つまり、東京の8月はオランダの10倍以上も暑い日が多いのです。

湿度の違い

【図③】

東京の7月と8月の平均湿度(平年)はそれぞれ76%と74%ですが、意外なことにオランダの湿度はさらに高く、7月76.5%、8月は78.9%にもなります。では、なぜオランダでは日本のような蒸し暑さを感じないのでしょうか?

鍵を握る「体感温度」

気温と湿度を元に体感温度を示す「Heat Index」という指標があり、人間がその温度をどのように感じるかを知ることができます。

【図④】

例えば、湿度75%のとき、気温26℃以下では体感温度に大きな変化はありませんが、気温が34℃になると体感温度は51℃にもなります。これは、気温が高いと汗が蒸発しにくくなり、体に熱がこもりやすくなるためです。逆に、気温が低いと湿度の影響は小さくなり、暑さを感じにくくなります。オランダでは湿度が高くても、日本のような蒸し暑さを感じないのはこのためです。

オランダでも油断禁物

日本では、ほぼ毎年1000人以上の方が亡くなっている熱中症。もはや気象災害とも言われています。普段は過ごしやすい日が多いオランダも、熱波が到来すると例外ではありません。2019年7月の熱波では、同時期の平均と比べて約400人も死亡者数が増加しました。ちなみに、オランダの熱波の定義は「最高気温25℃以上の日が5日以上続き、その中で3日以上が30℃以上になること」とされています。

今年の夏は平年より気温が低く、体が暑さに慣れていないため、熱中症には一層の注意が必要です。オランダでは7月20日頃から8月20日頃は一年で最も暑い時期とされ、「Hondsdagen(犬の日々)」と呼ばれています。これは、犬が暑さに弱いからではなく、星座のおおいぬ座シリウスに由来するものです。

近年、熱波の頻度が増加し、特に2000年以降は1〜2年に1度のペースでオランダにも熱波がやってきています。気温の上昇が予想されるときは、のどが渇いていなくてもこまめな水分補給をするなど、熱中症対策をすることが大切です。

※オランダはKNMI所在地のDe Biltの値を記載

参考URL

Hittegolven

Gevoelstemperatuur bij warm weer

Higher mortality during heatwave in July in the Netherlands

Geen standvastig zomerweer in ‘hondsdagen’

プロフィール

竹内青空(たけうち あおぞら)

徳島県出身。2021年よりデン・ハーグ在住。インスタグラム(@aozora_takeuchi)でオランダの天気や生活について発信中。日本ではウェザーニューズに所属して気象原稿作成やラジオの気象情報を担当、千葉テレビでも気象キャスターとして出演していました。