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アムステルダムの集合住宅、今年のベスト建築賞受賞
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アムステルダムの北東部アイブルグに建設された集合住宅ヨナス(Jonas)は、今年のベスト建築(Beste Gebouw van het Jaar)に選ばれた。審査委員は「未来の建築のプロトタイプ」だと称賛している。建築デザインはオレンジ・アーキテクツ。

集合住宅は住宅が道路や地域を形成するものだと同建築事務所は語っている。集合住宅の中の道路や広場は内側にあるものの公共のものだという。バイブルにあるヨナとクジラの話からインスピレーションを得たという。ヨナはクジラの中に閉じ込められ3日間心地よく過ごしたという話だ。

29,000平米という巨大なこの集合住宅には冒険があふれている。鱗状の亜鉛のファサードと、エントランスホールの別館コミュニティリビングルーム、木製の「骨」で仕上げられた通路、そして生い茂ったパティオの周りの作業場で構成される腹部」を備えている。

建物には273軒の入っており、このうち83軒が販売され残りの190軒は賃貸。家賃は月額1068ユーロからとなっている。住宅は住人たちのためでなく、公共の場でもあるというコンセプトで、木製のダイヤモンドのようにデザインされた巨大なエントランス ホールは、床から天井までの引き戸で隣接する広場に開かれている。この上にイベント用の巨大な観覧席が設置されている。居住者はシネマルームやゲスト用アパートメントなどの共用施設を利用できる。


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アムステルダムのマイクロ住宅、庭や食卓そして車もシェア
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アムステルダムで実験的に、食卓や車などをシェアするマイクロ住宅が建設された。マットレスとテーブル以外には不要というこのフラットについてのレポタージュ。

アムステルダムのハウトハーフェン(Houthave)地区にドムス・ハウトハーフェンというフラットが建てられた。オランダではかなり小さいと考えられている50平米以下の部屋が並ぶ。カラフルな部屋には工夫がたくさん散りばめられており、大きな家に住んでいる感覚が味わえるという。このアパート群はシンクローン社が建築事務所シフトA+Uと共同で施工したもの。

このアパートのテーマは省エネと省モノである。シェアできるものはシェアするというのがモットーで、洗濯機や車などもシェアする。このほか、中庭も共有だし、屋上にはクッキングスタジオとゲストルームが設置されている。ファシリティ・マネージャーがこれらの共有部分を管理し、コミュニティマネージャが住民のアクティビティを計画する。将来的にはスポーツ施設や保育所も併設される。孤立、孤独が社会問題になっている現在、このようなコミュニティとのつながりは重要な要素になる。

近年このような住居形態が大都市では多く見られる。入り口はホテルのロビーに似ている。大きな窓が設置されているので住民が日光浴も楽しめる。フラットの部屋はできるだけ広く使えるようキッチンは天井まで棚を作ったり、寝室は戸棚の中にベッドが入るような仕組みだ。また共有スペースもあるので、住民は仕事をしたり、テレビを見たり、バーでドリンクを楽しめる。

ただし賃料は決してコンパクトではない。46平米で月額1400ユーロとサービス料90ユーロがかかる。ただこれはアムステルダムの土地が高いことが要因で、同じようなアパートでも他の地域なら1000ユーロぐらいで建設できそうだという。

新人や中間層、住宅購入に政府補助金
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オランダでは低所得者層は政府からの補助金によるソーシャルハウスに住むことができる。しかし、仕事を始めたばかりの若者や中間所得層の家族は住居を購入できずに、高い家賃の賃貸住宅に住まざる得ない状況だ。これが今後、新築住宅の購入に際して政府の補助金が出ることになり、購入が少したやすくなる。政府は4億ユーロの予算を計上した。

4億ユーロで「手頃な不動産購入ファンド」基金が設立される。仕事を始めたばかりのスターターや年間収入が40,000から65,000ユーロの世帯は、新築不動産購入の際に最高75,000ユーロの割引が適用される。これにより、280,000ユーロ程度のアパートや家族用住宅が購入できるようになる。

購入後、住宅を売却する際にはこの補助金は返済しなければならない。さらに差益の一部も返済の必要がある。この返済金をもとに、基金はさらに別のスターターや家族を支援する。不動産価格が下がった場合には、返済金額も下がるという仕組みだ。

不動産価格の高騰と金利の上昇で、中間所得層は住居の購入がますます難しくなっている。そのため、高額の賃貸住宅に住まざる得ない。現在、オランダ全土の住宅価格平均は約400,000ユーロ。
政府は不足する住宅にも対処するため、2030年までに1500軒から5000軒の新築住宅建設を計画している。

住宅不足で大学が留学生に「ストップ」
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オランダの住宅不足は留学生にも大きな影響を与えている。9月から始まる新学期に向け、複数の大学が「部屋が見つかるまでオランダに来ないよう」呼びかけている。この呼びかけを始めたのはアムステルダムにあるVU(自由大学VrijUniversiteit)とUvA(アムステルダム大学Universiteit van Amsterdam)。どの大学都市も学生の部屋不足だが、アムステルダム市は特に深刻だ。ここ2年間は、バケーションパークがコロナ禍で空いていたためそこに住むことができた。ところが、コロナ禍は過ぎ去りバケーションパークというオプションはなくなった。

アイントホーフェン、ユトレヒトそしてマーストリヒトの各大学も先週から同じような呼びかけを始めている。ユトレヒト大学は、部屋が見つからずにオランダにやってきてテント生活を送ることを懸念して、この措置をとるという。オランダ人学生にとっても住宅不足は深刻なときに、留学生の部屋探しは困難を極める。コロナ危機以前にもティルブルフやフローニンゲンそしてアムステルダムの大学に留学した学生でテント生活を余儀なくされた人もいる。

オランダの大学はどこも学生の増加が著しい。留学生も例外ではない。2021−2022年には115,000人の留学生がオランダにやってきた。これは前年度より11,000人多い。アムステルダムの大学2校では4分1の学生が留学生だ。マーストリヒト大学に至っては留学生が56%を占める。

学生向けの住居不足はすぐに解消されないだろう。昨年だけで不足は20%も増加している。学生寮が建設されているがこれも間に合わない。住宅不足は留学生の増加もその原因の一端を担っている。オランダでは大学の国際化を進めてきたがここで足止めを食らいそうだ。

政府、中間所得者用住宅用家賃に制限か
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オランダの賃貸住宅は、政府の補助が出るソーシャルハウスと一般の民間賃貸に分かれている。前者は所得制限があるが、民間の賃貸住宅は誰もが入居できるが家賃に規制がないため、高騰が続いている。これに対し、政府は自由セクターといわれるこの中間所得者用住宅の家賃の制限に乗り出す。オランダで一番住宅難で困っているのは、この中間所得層。ソーシャルハウスに入居するには所得が高すぎるのと、この層のための住宅が大幅に不足している。

政府の提案では、いわゆる自由セクターの家賃がソーシャルハウス(家賃の上限は763ユーロ)と同様なポイント制になる。ポイント制とは、住宅の広さ、部屋数などで決まるが、144ポイントまでは、再考で763ユーロに制限されている。
現在住宅省のデ・ヨング大臣が計画しているのは、中間所得者用住宅の家賃をで1000ユーロ(187ポイント)からの1250ユーロ(232ポイント)内に収めること。このポイント内に90%の賃貸住宅が含まれるはずだという。

このシステムが導入されると、家主は家賃を自分で決めることができなくなる。現在、住宅不足が反映され家賃が大幅に上がっているが、大臣によれば政府がこれに思い切って介入するのだという。

しかしこの制度がいつからどのように実施されるかはまだ決定していない。大臣は夏以降に議会で検討し法定化を進める予定だ。法定化されると、各市町村は賃貸住宅がポイント制を遵守しているかを管理することになる。この制度は家賃の高騰を防ぐという目的があるが、同時に年金基金など住宅に投資している企業も守らねばならないというジレンマも発生する。そのほかにも現在の家賃はどうなるのか、どの地域の住宅に適用されるのかなど、解決しなければならない問題は山積みである。実際にこの法律が実施されるのは2024年以降になりそうだ。

住宅難。駐在員が戻り、家賃がまた値上がり
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賃貸物件を紹介するプラットフォームを運営するParariusによれば、コロナ禍で帰国する駐在員が増え一時的に家賃が下がっていたが、今年の夏以来また値上がりが始まっているという。政府による補助がない自由セクター(Free Sector)の家賃は7月、8月、9月には前年同月比で2.5%アップしている。家賃はこの3ヶ月平均で1平米あたり17ユーロ。家具付きの場合の平均家賃は1平米あたり18.99ユーロとなっている。ただし、家具なし、その他の設備なしという、いわゆる裸の状態の物件は同12.6ユーロと4.9%の値下げが見られる。

いわゆる自由セクターでの借家の需要は高い。オランダではたった7%がこの自由セクターの借家なので、家賃は上がる一方である。昨年はコロナ危機で帰国する外国人が多く、一時的に家賃は下がっていた。しかし入国が可能になって以来、アムステルダムなどの人気都市の家賃は上昇を続けている。アムステルダムの平均家賃は1平米あたり22.44ユーロ。このほか、フレーフォランド州やフローニンゲン州そしてヘルダーランド州といった地方都市でも家賃は大幅に上がっている。

Prerius社は、政府がなんの対策も取らなければ家賃はこの後も上昇を続けると見ている。政府は不動産投資企業が新規住宅を建てることを制限する意向だが、これは解決策ではないとコメントしている。

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