たまにわコラムその8~白黒をつけない~

テニスにまつわるコラムをまじかながお届けしていきます。
前回のコラムでテニスと将棋の共通点に触れながら「引き分けがなく勝敗が決するまで続く」と書いたことに矛盾するようですが、実はオランダにおいてその前提を覆す試合を味わうことができます。

冬のインドアシーズンになると、「1時間マッチコンペ」というリーグ戦を催してくれるテニスクラブがあります。
この大会は、冬のあいだにテニス勘や試合勘を失わないための場という意味合いが強く、ゲーム数のカウントもセットごとに区切らず時間内にできるだけゲーム数をこなすというスタンスで行われます。

文字通り各試合はウォームアップを含め1時間1本勝負でありブザーがなった時点で試合終了となるため、終了時点のスコアは例えば9-3となったり、7-7のように引き分けにもなったりもします。
このように変則的な試合のため、公式戦扱いとはならずレーティングに関しても計算対象外の位置付けです。
大会というよりは練習試合の感覚で参加できることに加え、何といっても終了時間が読めるということがむしろ選手の立場からすると秀逸な企画だと感じました。

また、1週間程度を大会期間とするテニスクラブ主催の通常の公式戦とは異なり、3か月程度の期間のなかで都合のよい日時を調整しながら試合を消化することになります。
事務局側も極力、エントリー時に示したこちらの都合を尊重するよう試合を組んでくれますし、実際にわたしも子どもの送り迎えのような動かしにくい用事を後ろに控えた時間帯で試合をしたこともあります。このような柔軟な計らいができることも、オランダ流の仕事や余暇や子育ての両立やバランスに寄与する遠因かも知れないと感じた次第です。

日ごろ、勝負事としてのテニスに限らず夫婦喧嘩や共同生活者との小競り合いでもついつい白黒をはっきりつけたくなる方にとって制限時間があるのは不都合かも知れませんが、たまには時間切れ引き分けも是とするオランダ流の心持ちで楽しんでみては如何でしょうか。