たまにわコラムその6~テニスコートでオランダを“味わう”~

テニスにまつわるコラムをまじかながお届けしていきます。

テニスをはじめとするスポーツにおいて、プレー前、プレー中、プレー後など適切なタイミングで栄養補給・摂取することでパフォーマンスを高められるという考え方が浸透するようになり、巷には色々な情報が飛び交うようになりました。
かくいうわたしも何をどういうタイミングで摂取するかに関しては日頃から気を付けるほうだと自負しますが、今回はそんな話にも通ずるようなものを中心に、オランダで遭遇したテニスと飲食物にまつわるエピソードを集めてみました。

その1:テニスとコーヒー

オランダでは個人戦トーナメントの充実ぶりもさることながら、”コンペ“と呼ばれる団体戦も見逃せません。
同じテニスクラブに所属する仲間でチームを結成し、他クラブに出向いてアウェイで試合をするか、自クラブにてホームとして相手を迎え撃つか、の2パターンがあります。
その際、ホームとアウェイいずれの場合でも、試合前にはまず互いのメンバー紹介を兼ねてテーブルを囲みお茶を飲むという慣習があります。過去のコラムでも試合後のドリンク文化について触れましたが、いわばその“試合前版”と言ったところでしょうか。
コーヒー(や紅茶)といえばカフェインを想起させ利尿作用を連想してしまうので、わたしにとっては試合前にはむしろ敬遠したい飲み物です。
そんなわけでいつもこの試合前ドリンクで何を飲もうかと逡巡するのですが、オランダ人の方々はたいてい気にする様子もなくしっかりと“お茶”しています。

その2:テニスと甘いもの

その1でとりあげた団体戦の試合前ドリンク時間ですが、実はお茶だけにとどまらず、ホーム側のおもてなしでケーキまで用意されていることも珍しくありません。
わたしとしては試合の一定時間前には食事を済ませるのが常で、試合直前に生クリームたっぷりのケーキを食べる気分にならないためおことわりをするのですが、試合前であろうとケーキとコーヒーでしっかりくつろぐ様子を見ると、社交場としてのテニスクラブという本来の位置付けを目の当たりにした気持ちになります。
オランダ人と言えばコーヒー好き、オランダ人と言えば甘いもの好き、とよく描写されますが、その象徴的な光景がテニスクラブでも見られるというのは興味深いものです。
余談ですが、この団体戦でも試合終了後のドリンクはしっかり行われ、そこではビタボーレンやフリカンデルなどのおつまみも出てきますので、団体戦は試合前だけでなく試合後もオランダらしさ満載です。

その3:テニスとアルコール

団体戦のチームメートであるオランダ人女子の試合中、コートチェンジでの出来事です。
わたしは飲み物が足りているかを彼女に尋ねたところ、なんとれっきとしたアルコール含有飲料である「APPLE BANDITを持ってきて」と言われました。耳を疑いましたが、ここは個人の意見を尊重する国だと思い直し、本人の希望どおりに届けてあげました。
プレー後の一杯が楽しみでテニスをしているという方はよく聞きますが、プレー中に飲んでしまったオランダ人にはさすがに驚かされました。

ところがプレー中のアルコールにまつわるエピソードはこれだけではありません。
試合中の教え子にビールを勧めたオランダ人コーチをテニスクラブで目撃したこともあり、このときも同じように仰天しました。
その言い分によると、アルコールが試合中の緊張やプレッシャーを解いてくれる精神的なメリットを期待していたそうですが、同時に肉体的なパフォーマンスを妨げるデメリットのほうが遥かに大きいだろう、というのがわたしの反論です。
といってもオランダ人は運動中にアルコールを飲む習慣があるという話ではありませんので、悪しからず誤解のないように。

あくまでオランダで遭遇した特殊な事例ということで紹介しましたが、ケガをしたくない方はくれぐれも真似をしないのが賢明でしょう。