オランダあれやこれや

いろいろな人が書くオランダにまつわるエッセー。書き手、常時募集しています

ワクチン接種
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前回投稿のコロナテストに続いて今日は私のワクチン接種についてお話したいと思います。
前回の投稿(コロナテスト)では“ある事情があってテストを受けた”と書きましたが、実はその理由はワクチン接種を受ける前に自分がコロナに感染していないかを確かめたかったからなんです。おかげさまでGGD(保健所)のテストセンタ―で受けたPCRテストは痛くもなく陰性でした。

私と主人の接種は5月末頃くらいかなあと思っていたので、厚生省とRIVM(国立公衆衛生環境研究所)から接種通知が届いた時は正直びっくりしました。ある土曜日の夕方に着いた封書を手にした主人は封筒の政府ロゴを見ると“税務署からだ”と言いながらビリビリと封筒を開けました。突然“ええっ~~”と普段は物静かな主人が声をあげました。私はビックリして“何?税金の支払い請求?!”と主人にかけよりました。 すると、“ワクチン接種の通知だ”という答えが返ってきました。しかも、接種日は1週間後・・・。
私達の年齢カテゴリーはホームドクターから受ける仕組みになっていて、封書の中にはRIVM(国立公衆衛生環境研究所)からのコロナワクチン接種についての説明が書かれ“貴方への接種はホームドクターが行います”と書かれた手紙、ホームドクターからの接種日と時間(1、2回目両方)、ワクチン名が書かれた手紙が入っていました。そして、個人情報をRIVM(国立公衆衛生環境研究所)に登録する有無の問いも書かれていました。
丁度私達が接種をした時はアストラゼネカワクチンの副作用について毎日ニュースが流れ、私達の接種数日前に欧州薬品委員会はアストラゼネカと血栓症の関連を発表したところでした。自分達の順番が来たら接種を受けると夫と決めていたものの、いざその時がやってきてしかも副作用のニュースが世間を騒がさせている中、不安がなかったと言えば嘘になります。“大丈夫かな”と夫に聞くと“コロナに感染して死亡する率の方がワクチンの副作用で死亡する率より高い”と答えが返ってきました。それと、今接種を拒否したらいつまた順番が回ってくるのかわからないというのもありました。 

副作用のニュースには敏感にならないようにして接種当日を迎えました。当日夫は離れて暮らしている娘に“お父さんとお母さんはこれから接種を受けに行ってくるよ”と電話しました。 その電話を受け取った娘からは“パパ、何だかお別れのような口ぶりね”と苦笑される始末。
自宅からホームドクターまでは歩いて20分程。 ホームドクターの診療所に近づいたところで夫の片手を握り“これまで34年間連れ添ってくれてありがとう”と冗談ぽく告げる私を夫は“おいおい”と笑いました。ホームドクターの診療所の裏口からは接種を終えた人達が出てきました。私達もマスクをつけ表から診療所に入りました。
入口ではまずアシスタントが“コロナのような症状はありませんか?”など質問し、“ありません”と答えると両手にプシュプシュと消毒液をかけてくれました。
次に進むと別のアシスタント2人に接種通知を差し出します。そして接種登録証を渡されます。接種登録証には氏名、生年月日、接種日、接種ワクチン、ワクチンのパッチ番号が書かれています。“2回目の接種時にはこの登録証を忘れずに”と言われた後、更に前に進むと
これまた別のアシスタント2人が笑顔を浮かべながら注射器を手に待っていました。
(この光景を想像してみてください・汗)。
さあ、これでいよいよ“本番”です。コートと上着を脱ぎ立ったままの状態で左腕上部にプスッと針が刺しました。接種されたところに絆創膏を張ってもらい終了。
そして、奥の待機所に座って15分間様子を見ます。この待機所がほぼ満席状態で、椅子同士の間隔はちゃんと開けてあるものの予想以上に接種に来ていた人がいてびっくりしました。マスクで半分顔が覆われている為、夫が何処にいるのかわからずキョロキョロする私に夫が手を挙げ居場所を教えてくれました。椅子に座ること15分間。回りの人達を見ると談笑したりとてもリラックスしていました。待機所の椅子は人が変わる度にアシスタントが消毒液で拭いていました。このアシスタントは接種を終わった人に“新しい犠牲者さん、ようこそ”なんてブラックジョークを飛ばしてて、オランダらしいなあと実感した一面でした。
15分が経過し私達も診療所を後にしました。診療所を出たところで記念の一枚と写真を撮りました。

その日は帰宅後中華をデリバリーしてのんびり。特に体に異変は感じませんでした。
翌日は日曜日。午前中に日課の散歩をし、帰宅後にシャワーを浴びた後一日中ソファーに寝ころびながらストリーミングサイトで映画を観ました。風邪の引き始めのような感じで体がややダルかったです。その翌日の月曜日は散歩しながら足が重く感じましたが、その翌日にはその重さは消えていました。
お蔭様で夫も私もこれといった副作用はなく元気にしています。2回目の接種は1か月半後です。もしかしたら2回目の接種後の副作用が強いかもしれません。
でも、1回目の接種を受けたことで気持ちが少し楽になった気がします。
数日前には4か月振りに義弟宅に行きました。2回目の接種を終えたら娘の所に遊びに行きたい、今はそれが1番の楽しみです。

ワクチン接種については様々な意見が分かれています。受ける受けないは勿論個人の自由です。でも、受けることにより自分だけではなく自分にとって大切な人々も守れると私は思います。毎日日本のニュースをネットで読む度に日本ももっと臨機応変になって時間と貴重なワクチンを無駄にしないようにしてほしいと願わずにいられません。

皆さん、Stay safe!


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新しい非mRNAワクチン、オランダ健康大臣許可に
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ノババックス(Novavax)と呼ばれるコロナ重篤化予防のためのブースターワクチンの使用を、昨日カウパース国民健康省大臣が許可した。18歳以上の人はだれでもこのノババックスを選ぶことができるようになる。ただこのワクチンがオミクロン変異種に感染した場合にブースターショットが十分な防御ができるかどうかはまだ不明だという。

オランダ健康委員会は先週、ノババックス・ワクチンの効果はまだ不明な点が多いため、ブースターとして利用するのはまずは mRNA種のワクチンであるモデルナかファイザーのワクチンを優先するとコメントしている。しかしながら、国民健康省はノババックスワクチンは、全くワクチンを接種しないよりは重篤化を防ぐと発表している。またいわゆるmRNAワクチンにアレルギー反応を起こす人などは、こちらのワクチンを選んでいる。

ノババックスは、昨年 3 月から 12 歳以上のすべての人が使用可能となっている。ブースター接種の場合は18 歳以のみが 選択できる。副反応は通常軽度で、mRNA ワクチンと同様だという。日本語の情報はこちら。武田社の新型コロナワクチン(ノババックス)について

9月中旬から、コロナ感染で重症化するリスクが高い人を対象にブースター接種を呼びかけている。医療従事者や毎年インフルエンザの予防接種を受ける人も接種の招待状を受け取っている。その他の人の順番がいつになるかはまだ不明だが、同省は数週間以内になると予想している。

今年の冬はインフルエンザが蔓延。ワクチン接種について
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コロナ規制が大幅に緩和されたことに伴い、今年の冬は通常のインフルエンザが猛威を振るう可能性が高いと、ウィルス専門家が警告している。今日は全国インフルエンザ・ワクチンの日。インフルエンザに関するシンポジウムなどが開催される。オランダでは10月と11月には、約400万人にインフルエンザのワクチン接種が無料で提供される。対象は60歳以上の人、慢性疾患のある人、そして医療関係者である。

インフルエンザ協会は対象者がワクチン接種を受けるよう呼びかけているが、それでもWHOが推奨する75%に満たない。さらに、コロナウィルスの感染する人は減少しているものの、水平線をたどっている。それでも、イベントは開催されるし、1.5メートル規制も廃止されるなど大幅にコロナ規制は緩和された。さらに、ここ1年半の期間インフルエンザに感染した人はほとんどいないため、免疫を持つ人が減っている。このため、今年の秋冬にインフルエンザが爆発的に広がる可能性があると、アムステルダム大学病院のウィルス専門家であるデ・ヨング博士が警鐘を鳴らしている。

インフルエンザワクチンは子供も摂取を受けることができる。子供は感染しても症状は軽いが、これを両親あるいは祖父母に感染させる可能性がある。
政府が対象としていない60歳未満の健康な大人も希望すれば自費でワクチン接種が可能だ。ホームドクターに連絡しワクチンの処方箋を出してもらい、これを薬局で受け取る。受け取ったワクチンをホームドクターに持っていき摂取を受けるという仕組みである。費用は保険でカバーされる場合が多い。また企業によっては会社負担でワクチン接種を進めているところもある。

秋にコロナ禍再発か? 3度目のワクチンの可能性
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新たなコロナウィルス感染の波がやってきそうだと、国内外の専門家が警鐘を鳴らしている。オランダの国立衛生研究所(RIVM)の試算は、ICUに2,200人から3,400人が収容され(ICUベッド数の2−3倍)、16,000から22,000人が入院を余儀なくされるという暗いシナリオを呈している。

オランダでワクチンを摂取した人は約85%、摂取を拒否(あるいは不可能)している人が180万人いる。さらにワクチンを摂取しても重症化はしないもののコロナウィルスに感染する人が75万人ぐらい出そうだと推定されている。
これから秋に入り通常のインフルエンザも蔓延する季節になる。ワクチン接種を受けていない人は早かれ遅かれコロナウィルスに感染するだろうとRIVMは予測している。

さてこれだけウィルスが蔓延し感染済みの人が増えれば、集団免疫がすでにできあがっているのではないかと考える人も多い。しかし国内外の専門家は否定的だ。いまだに集団免疫は確立していないというのが彼らの一致した意見である。また新規の変異株の発生など予測不能の事態もあるため、上記のRIVMの試算も確実性は高くない。

政府は再度のロックダウンを避けるため、手洗いやソーシャルディスタンスといった基本的な規制を進めるとともに、ワクチン接種拒否者に対し接種をするよう呼びかけている。ただワクチン接種開始が早かったイスラエルでも、コロナ禍が再燃し今週だけでも500人以上が重症化し入院した。これを受け現在第3回目のワクチン接種が始まっている。イスラエルと同様、第3回目のワクチン接種の可能性も9月には政府は検討するだろう。

コロナやワクチンに関するフェイクニュースや陰謀説を流す団体の口座凍結
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コロナウィルスやワクチンに関する「フェイクニュース」や「陰謀説」を流していると見なされた団体の銀行口座が凍結されている。全国紙NRCハンデルスブラット紙によれば、影響力のあるインターネットサイトを運営する企業、少なくとも8社が銀行口座を凍結されている。「ウィルスの真実(Viruswaarheid)」や、出版社「ブルータイガー(De Blauwe Tijger)」そして「エバンジェリスト・ヤープ・ディーレマン」などが含まれる。

銀行口座凍結や支払いサービスの停止などは銀行が自主的に行っているもので、政府とは関係ない。ラボバンクは「コロナ陰謀説や偽情報を積極的に流すサイトにはサービスを提供しない。」と発表、「WWFTと呼ばれるマネーロンダリングの防止とテロ資金調達に関する法律に抵触する過激活動と同等に対処している。」と説明している。

トリオドス銀行も「ウィルスの真実」というサイトを運営する企業を排除している。また支払いサービスのモリー(Mollie)もコロナワクチン反対の動画をYouTubeなどで流すサイトへの支払いサービスを停止した。
ING銀行は、保守的な出版社であるブルー・タイガー社との取引を停止。この出版社は国家安全保障およびテロ対策コーディネーター(NCTV)が「反政府扇動、フェイクニュース、陰謀論」を流す企業と指定したことが引き金となり、ING銀行が取引を拒否したもの。
3月に全国のホームドクター向けに「根拠のないワクチンの驚異」について手紙を送りつけた「真実のための医師(Artsen voor Waarheid)」は、バンク(Bunq)銀行が取引停止をしている。

国民の間では思想の自由の保障に反し差別的だという意見や、銀行などの商業機関の方針は自由だという意見が混在している。

ワクチン接種直後にクラブに行けるのか?
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一回の接種だけで完了するヤンセンのワクチン(Johnson & Johnsonのオランダ名。オランダで開発されたワクチン)を打った直後にクラブに行けるのだろうか? 現在クラブも再開し、今日からコロナパスポート(CoronaCheck アプリのQRコード)の提示だけで入場できる。すでに先週だけで23万3000人がこのヤンセン・ワクチン接種予約している。

実際のところヤンセンのワクチンは感染を66%防ぎ、重篤化を85%防ぐことが実証されている。政府広報(Rijksoverheid)によれば、接種してから2週間後に効果が出るとしている。ただ、現実ではコロナパスポートに接種証明QRコードがあれば、これを待たずに入場は可能だ。

これに対しワーへニンゲン大学のサーフェコウル教授は「正しくない」と否定、速攻でワクチンが感染を防御するという科学的根拠はないとコメントしている。感染から身を守り、他人を感染させないためには、ワクチン接種後最低でも3日間は待たねばならないし、重篤化を防ぐには最低でも10日間は必要だという。「ワクチンが血管を通して体内に入り、免疫を作るのに数週間かかる。」とライデン大学のワクチン専門のケルステン教授も述べている。

ワクチン接種証明がワクチンパスポートに反映されても、2週間は感染のリスクがあると国民健康省は強調している。また陰性証明書も100%確実ではない。ただ混み合ったクラブで踊ることはあくまでも自主判断に委ねられている。さらにオランダでは、危険国(オレンジ)からの旅行者もこのワクチン証明書でクラブにもイベントにも行ける。他国ではこれはもっと厳しく、ギリシアやイタリアでは旅行者に対しワクチン接種後2週間、フランスでは4週間の待機期間を義務化している。

この「ゆるい」オランダの政策は後にツケが回って来るのか? 上記専門家たちは、バケーションの終わった9月にこれが判明するだろうとしている。

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