あれから20年

今日2021年4月1日は世界で初めて4組の同性カップルが合法的にアムステルダムで結婚式を挙げてから20周年。世界のLGBTQ社会にとって記念すべき日です。
かく言う私も2001年12月に「同性婚」をしました。その頃パートナーレジストレーションをしているカップルはいたものの、結婚をしようという同性カップルは私の周囲には皆無でした。2001年当時はまだみんな様子見をしているような状況だったと思います。私たち夫夫にとっても、同性婚ってできるようになったけど俺たちにはあまり関係ないよね、同性婚するゲイの人たちって活動家とかそういう俺たちとは違う人たちだよね、っていう感じでした。意識低い系だったのです。

そんな当時、私は失業するかもしれない危険にありました。失業したら外国人として職探しするのが大変だ。職が無ければこの国に合法的に滞在することができなくなるかもしれない。焦った私は、オランダに住み続けるには彼とパートナーレジストレーションするのが一番手っ取り早いと戦略的に考え、彼に相談したら合意してくれたので、二人で市役所に行くことになりました。それが2001年の7月。

市役所の担当者は「パートナーレジストレーションもいいけど、今年の4月から同性婚ができるようになったの、知ってるでしょ?今パートナーレジストレーションして、もし後で結婚に変えたいと思ったら同じ手続きをもう一度繰り返さなきゃならないのよ。二人がこれからもずっと一緒にいる自信があるんだったら結婚しちゃった方が断然お得よ。結婚の方が素敵だわ~。」と妙な煽られ方をされてしまいました。Voordeliger = その方がお得、そういう言い方する?いかにもダッチだわ~と思ったので、この時のことはとても印象に残っています。
その場で変更するのはなんなので、ひとまず二人で相談してから出直すことにしましたが、二人で出した結論は「お得な結婚」にしちゃおうということでした。瓢箪から駒な結婚で、同性婚を真面目に考えていらっしゃる方々には本当に申し訳ありません。

結婚することに決めてからふと気が付いたら我々がゲイ友達仲間では同性婚第一号でした。それもいろいろ面倒くさい国際結婚。それより前に私は親にもカミングアウトしていなかったことも思い出し、そんなんで大丈夫なの?という感じでしたが、何とかなって無事結婚、時は流れて20年後の今に至るという次第です。失職することもありませんでした。

同性婚発足初年度でしたから、それはそれは皆さんからの反響が大きかったです。「勇気あるね」とか「時代の先端を行ってるね」とかいろいろ褒められました(?)が、否定的な意見はありませんでした。印象に残ってるのは結婚パーティーに招待した職場の同僚から「私、same sex marriage に出席するの、初めてなの。招待してくれてどうもありがとう。とっても楽しみにしてるから!」と物凄く喜んでもらえたことでした。いや、僕も同性婚の結婚パーティーに出るの初めてだからすごく楽しみなんだけど、と返して二人で大笑いでした。くだらない事を訊かれた事もありました。「二人のうちどっちがウェディングドレスを着るの?」結構真面目に訊いてきたので驚きましたが、20年前はオランダでもそんなもんでした。今はこんな事を訊ねる人はいないですよね。いないと信じたいです。

20年前は相当珍しがられた同性婚も今のオランダでは全く普通のこととなっていると思います。今はもうSame sex marriageという言葉さえあまり使われなくなってきているのではないでしょうか。Marriage equalityの方が今っぽいかな。周りでも結婚をしている同性カップルが増えましたし、職場での福利厚生などの処遇をはじめ、社会的認知度もヘテロセクシュアルのカップルと全く同じです。結婚は結婚。二人が異性だろうが同性だろうがそれは重要な事ではない、との考え方がオランダでは浸透していると思います。少なくとも私が暮らすオランダ西部の都市部ではそうです。

でも。私は日本の戸籍上は今でも「未婚」のままです。これね、何とも表現しがたい思いです。自分の国から自分の人生を否定されているようで、不満を通り越して悔しい気持ち。日本の家族にも友達にも既婚夫夫として受け入れられている私たち、日本の一般の人々の同性カップルに対する考え方もかなり変わってきている事を日本に行くたびに実感しています。早く日本でも他国並みに「同性婚」が法的に認められることを願っています。日本で同性婚の実現に向けて頑張っている人たちの努力が早く報われますように。誰もが結婚したい人と結婚できる社会に早く日本がなりますように。

画像:デンハーグにあるInternational HomomonumentとLGBTQ社会の象徴であるゲイフラッグ。