ゆるベル通信 Vol. 5 【ツワモノたち】

こんにちは。白乃ちえこです。ゆるいベルギーからゆるいお便りをお送りします。

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あるとき、ベルギーの知人の引越を手伝った。
彼女たちは若かったので業者に依頼せず、親戚や友人を駆り出しての作業である。

部屋に積み上げられた箱やら年季の入った家具などなど、
玄関先で待ち受けるバンに運び込むのだが、
参加者一同、手当たり次第に運び出しては積んでゆく。

いやいや、そのランプを最初に持っていっては・・・とか、
あ、このかさばるソファをそこに置いては・・・とか、口をはさみたくなったものの、
どの人もあんまり楽しそうにおしゃべりしながら立ち働いているものだから
空気を読むニッポン人、水を差すのもナンだし・・・とついだまって見守ってしまった。

当然ながら、バンは隙間があってもすぐに満載となり、第一便の出発と相成った。
同じ街の引越先で荷下ろし作業が終わったチームは、ほどなく空のバンで戻り、
コーヒー片手にビスケットをつまみながら談笑していた待機組は、
気まぐれにまた積載を始める。

そうして第二便、第三便、と日がな続いたわけである。
いったい、遠距離だったらどうしたんだろう。

後ろに待つ人がいようがいまいが店の会計で、役所や銀行の窓口で、
のんびり話す人をひたすらに待つ訓練を積んだツワモノたち、
そのゆったり構えるさまは見事なまでだ。

そればかりか、バルト・ドウェーヴァー・アントウェルペン州知事に至っては、
自宅でのビデオ会見中、ご自身の背後に控えるでっかい鏡に、
シャツだけきちんと着て ズボンをはかずに臨んでいたことが
しっかり映しだされてしまったのだ。寝起きだったのかしらん。

まさに おおらかたらん とする鑑である。

(つづく)

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