ゆるベル通信 Vol.2 【非罰的な人たち】

こんにちは。白乃ちえこです。ゆるいベルギーからゆるいお便りをお送りします。

***********

住宅地にある拙宅前の道路は一方通行で、その上居住者用と表示されています。ところが、通り抜けでよく利用されるばかりか、逆走する車も珍しくありません。

そのたびに律儀に腹を立てるドイツ人の夫を 「ここはベルギーなんだから」 とやんわりなだめます。お互いの健康のためです。

ある日、夫が家の前を通りかかったパトカーを、やや強引に停めました。そのパトカーが逆走していたことはぐっとこらえて目をつぶり、乗車の警官に別の苦情を寄せました。「ここは居住者用の細い道路なのに、交通量が目に余るんです」

家路を急いでいると思しき警官は
「それなら警察に届けて」
と言い残して、逆向きのまま颯爽と走り去っていきました。

一方、街中の商業地では、軒を連ねる店頭への搬入作業などで車両がよく一時停車をします。駐車ゾーンの横、つまり往来用の車線に、です。自分の前でそんな車が停まっていたら、対向車線が来ない瞬間を見計らって追い越します。
みなさん、じつに辛抱強く、これはもう堪忍袋の緒を強化する絶好のチャンスです。

また、二重駐車をしても文句を言う人はまれであるどころか、
「今はだまって見逃すけど、僕も私もするからね」 という暗黙の了解があるようです。
そうして流れるように機能するさまは、さながら大相撲、あるいは合気道の立ち合いのよう。

ある人がこの国の人たちの気質を 「非罰的」 と表していました。
というのは、基本的に 「お前が悪い」 とかかってくる北米の某超大国では 「他罰的」 要素が強く、
「私のせいで」 と自分責めしがちな極東某国のたおやかな民は 「自罰的」、
それに対して 「非罰的」 という描写は、実に言い得て妙だと感心しきりです。
 
欧州の大国に囲まれ、歴史の荒波にもまれながらも、しかと生きのびてきた小国ならではの
したたかで健康的な処世術なのではないでしょうか。

(つづく)

***********
下記もご覧くださいましたら幸いです。日々の想いを綴ったブログ:chiekoshirono.com
日々の幸せを切り取ったインスタ:https://www.instagram.com/chi.shiro1/