龍児の世界:デン・ハーグの風景

オランダ第三の都市であるデン・ハーグは中世の頃から政治の街。ここにはオランダの国政を担う省庁や各国の大使館が集まっています。そしてハウステンボスと呼ばれるオランダ国王家族の居住宮と、ノールドアインデ宮殿という国王の執務宮もあります。アムステルダムとロッテルダムの持つインターナショナルさとはちょっと違うインターナショナルな雰囲気と歴史を感じさせる佇まいがデン・ハーグにはあります。派手ではないけれど、地味でもない。面白みに欠けるけど、つまらない所ではない。それほど知名度が高いわけでもないけれど、全く無名でもない。そんな微妙なバランスがある都市です。

デン・ハーグでは王室のメンバーや政治家に街中で突然会うことも珍しくはありません。先日もマキシマ女王が自転車でKunstmuseum(Gemeentemuseumと呼ばれていた美術館が改名しました。)を訪問したニュースがありました https://royalcentral.co.uk/europe/netherlands/queen-maxima-cycles-to-work-to-support-reopening-of-famous-museum-143891/し、ウィレム・アレクサンダー国王とマキシマ女王の3人の王女たちも市民と同じように自転車で通学しているそうですhttps://www.ad.nl/show/prinses-alexia-stapt-gewoontjes-gekleed-op-de-fiets-naar-school~acc27e2b/"。
私も国王の弟君であるコンスタンティン王子を職場近くのアルバートハイン(Albert Heijn、オランダのスーパーマーケットチェーン)でよくお見かけします。いつもお一人でいらっしゃって、カート一杯に買い物されていきます。レジ担当の店員さんと顔馴染みらしく、お会計の最中によく談笑されてます。初めて王子をここでお見かけした時には、あれ、どこかで見たことある顔だけど??というくらいで、仕事帰りのお父さんが買物しているのと全く変わぬごくごく普通っぽい感じでそれがどなたかはすぐにわかりませんでした。周りの買い物客も別に気に留めていない風でした。彼の後をつけて駐車場に行って、買い物を車に入れている姿をよーく見てようやく、あ、王子だと分かった次第です(ストーカーではありません)。

まったく普通っぽくて分からなかったのは、ルッテ首相も同じでした。土曜日の昼前、デンハーグのセントラムでスタジャンにジーンズの背の高い男性とすれ違い、あれ、今の誰だったっけ?と思ったのがルッテさんでした。小脇に新聞と、スナックバーで買ったと思われるサンドイッチでも入った紙袋を持って歩いてました。護衛らしき人は見なかったです。ルッテ首相も自宅から首相官邸であるCatshuisや彼の執務室のある国会議事堂Binnenhofに自転車で通勤する様子が有名です。
コロナの自粛生活も緩まってきたある金曜日の午後、BinnenhofのプレスセンターNieuwspoortの前を通りかかったら、こんな光景に出くわしました。
 
首相の到着を待っていたデモ隊3名(赤いTシャツの男性とその両隣の女性たち)と、建物の中に入る前に彼らの抗議に耳を傾けるルッテ首相。市民と政治家の間の垣根の低さを確認した一瞬でした。こんなところも私がオランダを好きな理由の一つです。