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ズワルトピート(黒人従者)に関するルッテ首相の見解一転?
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オランダにおける反人種差別デモに関する国会討論で、ルッテ首相はオランダの伝統行事であるシンタクラース祭に欠かせない黒人従者ズワルトピートに関する意見を発表した。オランダの子どもたちにとってクリスマス以上に重要な行事「シンタクラース祭」。スペインから船に乗ってやってくるシンタクラース(聖ニコラス)は白い馬に乗り数人の黒人従者ズワルトピート(黒いピート)を従えている。子どもたちはこのお祭りの期間、毎日プレゼントを貰える。

2013年、国連がこのズワルトピートを人種差別だと批判するという事態が起き、オランダ国内で反ズワルトピート派と伝統を守りたい保持派が対立した。一部の市町村では黒いピートを廃止し、顔を茶色に塗るなどの措置を取ってきた。これまでルッテ首相は伝統を守るという立場を通していたが、今回の米国の警官による黒人殺人事件とオランダにおける反人種差別デモに直面し、ズワルトピートがどれだけ人種差別を煽っているかを痛感したと延べた。シンタクラース祭での黒人が辛い思いをすることをなくしたい。と首相はこれまでの立場を一転した。「数年後には顔を黒く塗ったピートは消え去るだろう。」と首相。ただし政府によるズワルトピートの廃絶や規制は考えていない。

オランダでの(構造的)人種差別は根が深く、税務署などの政府機関、労働市場、そして住宅市場でも公然と行われている。首相はこの差別の撤廃に乗り出すようだ。


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オランダ最大の人種差別反対デモが今夜黒人地区にて行われる
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オランダではアムステルダム、ハーグ、ロッテルダムそして各地方都市で反人種差別デモが行われたが、10日午後17:00にはアムステルダムの南東地区ベイルマー(Bijlmer)にて大規模なデモが計画されている。
ベイルマー地区は、近年ではオフィスビルやマンションなどが建造され人種融合化が進んでいるが、それでも大半の住民は非オランダ人である。オランダは過去南米のスリナムを植民地支配していただけでなく、現在でもカリブ海にオランダ領を所有している。ここに住む黒人はスリナムやカリブ海領地からの移住者が多い。以前は犯罪が多く危ないと言われた地区だが、最近では改善され犯罪率も半分以下に下がった。レストランやカフェなどもエスニック料理が豊富で楽しめる。

本日のデモはこのベイルマーのアントン・デ・コム広場で予定されていたが、ソーシャルメディアなどで参加を募ったところ4000人以上が参加を表明している。これまでの経過から最低この倍以上の参加者が予測されているため、急遽近くのネルソン・マンデラ公園に変更されている。ここには人との距離を1.5メートル開けても18,000人が立てるという。

本日のデモの主催者によれば、ザイドオースト(ベイルマー)黒人地区は、構造的な差別のシンボルで、いかにこれ(隔離政策)が失敗しているかを表すものだという。ベルギーではアフリカのコンゴでの搾取を行ったとしレオポルド2世の銅像が倒されるという事件が起きたが、オランダは奴隷貿易で富を得ていた。オランダで奴隷制度が廃止されたのは150年前である。
(画像:Gemeente Amsterdam)


ルッテ首相、人種差別反対デモについて言及
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3日夜の渡航規制に関する記者会見で、ルッテ首相はオランダの人種差別反対デモについて言及した。米国のミネアポリスで起きた警官による黒人殺人事件を受け、オランダでもアムステルダム、ハーグ、フローニンゲン、ロッテルダムなどで人種差別反対のデモが行われた。アムステルダムではソーシャルディスタンスを無視した大規模なデモが行われ、市長の責任が問われている。ハーグやフローニンゲンでは1.5メートル規制を守った整然としたデモが行われた。ロッテルダムで昨日行われたデモでは、数千人が集まりエラスムス橋をびっしり埋めるほどの状態となり、市長の解散命令で終了した。記者会見ではこの件について首相が問われた。「デモをする権利は民主主義の基本」であるとし「デモの趣旨は1000%理解できる」とデモに対しては肯定的だったが、まずは1.5メートル規制が優先されるべきで、アムステルダムのデモは無責任であるとの見解を述べた。

さらに首相はオランダの人種差別について「構造的問題」であると述べ、「オランダでも人々は出身国や人種により判断されている。」「アメリカだけの問題ではない。」と見解を発表した。米国で警察官がデモ隊に催涙ガスを発射したりゴム弾を投げている様子について「アメリカの政府に対しコメントは避けるが、この画像はショックである。」と批判した。

人種差別に対するデモ、コロナ規制とのジレンマ
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6月1日、先週米ミネアポリスでの警官による黒人男性殺害事件を受け、人種差別に対するデモ「Black Lives Matter」がアムステルダムのダム広場で行われた。当初は250名ほどの参加者を見積もっていたが、蓋をあけると5千人が集まるデモに拡大した。現在オランダはコロナウィルス拡散防止のため、人との距離を1.5メートル開けるという規制があり、違反すると390ユーロの罰金が課される。
今回のデモでは、当局はこの規制を無視し罰金は課さないという方針を示した。憲法で保障されている言論とデモの自由に基づきデモを許可したハルセマ市長も「もしこれだけの人が集まることがわかっていれば、別の方法で取締ができたはず」と述べており、「悪魔のジレンマ」に直面したと心中を吐露した。

今回のデモに関してはオランダ国内で賛否が渦巻いている。ハルセマ市長の主張する「デモをする権利」を主張する人たちと、「これまで規制を遵守し不自由を強いられていたというのにこのような集会が許されるのはおかしい」「感染が拡大する可能性がある」と、コロナ禍の時期のデモに反対する人たちだ。

6月2日にはハーグ、そして3日にはロッテルダムで「Black Lives Matter」のデモが計画されている。ハーグのデモを組織するグループは「参加者はマスクをすること。(リスクグループは)なるべくデモには参加しないで、ソーシャルメディアなどを通して賛意を表して欲しい」と発表している。

反ズワルトピート団体、人種差別裁判で敗訴
オランダの冬の風物詩であるシンタクラース祭。赤い服を着たシンタクラースに付き添うのは顔を炭で塗り、真っ赤な唇と大きなイヤリングをつけた黒人の従者(ズワルトピートZwart Piet)たちである。このオランダの伝統行事に対し、黒人を奴隷扱いする人種差別だとして反対を表明する人がここ数年増えてきた。また国連の人種差別撤廃委員会も2015年にこの問題を指摘し、オランダ政府に対し廃止を検討するよう求めている。しかしながらオランダ政府は各市町村に決定を委ねるのみで、積極的な話し合いは行っていない。

今年はオランダ北部の風車が並ぶザーンセ・スカンスがシンタクラースの上陸地点となるが、この地で反ズワルトピートを唱える団体「マジョリティ・パースペクティブ」が政府やザーンセ・スカンスのあるザーンダム市などを相手に訴訟を開始した。14日、ハーレムの地方裁判所で「ザーンダムから行進するズワルトピートは、外見を変更する必要はない」という判決を発表、「マジョリティ・パースペクティブ」の敗訴が決定した。判決は人種差別という観点には触れず、反ズワルトピート団体が訴訟相手のザーンダム市との間に事前の話し合いをもたずに突然訴訟に出たというのが、訴えを退ける理由となった。ただし判事は判決のあと「表現の自由」を尊重したと述べている。

ザーンダム市は判決前にすでにピートの外見を変更したと語っている。これまでも他の市町村で典型的な黒人奴隷を彷彿させる外見をとりやめているところも出ている。国民の間でも伝統を守るべきだとする人たちと、人種差別の典型であるズワルトピートは廃止すべきだという意見が二分している。