独自のダンスメソッドを生み出しオランダで活躍する渡邉明日香さん

独自のダンスメソッドを生み出しオランダで活躍する渡邉明日香さん

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アムステルダムのライツェ広場に近いダンススタジオ「アムステルダム・ダンス・センター」に渡邉明日香さんを訪ねました。きりっとしたお顔の印象にたぐわず、29歳とは思えないしっかりした考えをもつ明日香さん、インタビューでエネルギーをもらいました。

P: バレエはいつからやっているのですか?そしてオランダに来たきっかけを教えてください。

A: バレエは4歳のときに始めました。高校2年のときにどうしても海外でバレエを学びたく、中退してニューヨークの名門バレエ学校であるジョフリー・バレエ・スクールに入学しました。16歳のときでした。そのときは英語もできないし、ニューヨークにも学校にも馴染めず苦労しました。でもなんとか1年のコースを終えることができました。私を信頼して学費を出してくれた両親にはとても感謝しています。ただニューヨークはエンターテイメント性が強く、当時の私は繊細さに欠けると思ったのです。それで2006年にハーグにある王立音楽学院のバレエ部門に願書を出し、ビデオによる選考で10名選ばれた中から、最終選考でひとり残りました。これがオランダに来たきっかけです。この学校で2年間学びました。授業は厳しく、頭も体もバレエでいっぱいで、他のことで楽しむ余裕など全くありませんでした。

P: 卒業後はカンパニーには入らずにフリーランスになられたのですね。

A: 実は在学中に昔からの怪我がひどくなり日本で手術を受けました。2年に渡り2回手術を受けたので、授業も見学をすることが多かったです。今でもトウシューズを履き続けると痛みがあります。そのため毎日厳しい練習のあるカンパニー(バレエ団)ではなく、プロジェクトベースで踊ったり、バレエやダンスを教えるフリーランスを選びました。

P それですぐにオランダで仕事を始めた?

A: いえ、そんなに簡単には行きませんでした。 スロバキアでオーディションがあり合格したのですが2009年の経済危機で契約が流れてしまいました。その後、機会がありアムステルダムのホ-ランド・ダンスフェスティバルに出演したのですが、一緒に踊ったパートナーがオランダ有名ダンスカンパニーNDTで10年の経験者だったこともありそれが大きな重圧となりましたが、たくさん学ぶことはできました。学生ビザも切れてしまったので、仕方なく日本に戻り鬱々とした日々を過ごしました。しかし、やはり日本にはいたくない、海外で仕事がしたいと気持ちは抑えることはできずに、オランダに戻ってきました。そうして、アムステルダム・ダンス・センター(ADC)やアムステルダム芸術大学(AHK)などで教える仕事を得ました。最初はオランダ人の恋人と住んでいたのでパートナービザで滞在許可を得ていましたが、彼と別れた今では就業ビザを得て滞在しています。

P 今教えていらっしゃる「Asuka Method」について教えてください。

A: ダンスを通して、色々な人をつなぎ、その中でいかに自分らしくいられるかを見つけるのが「Asuka Method」です。ずっとバレエや他のダンスをやっていて気がついたのが、結局は同じものを目指しているということでした。つまりスタイルはそれぞれ違いますが、エッセンスやエレメントは同じものが多いのです。そこで垣根を取り払った新しいダンスメソッドを作り、今年の9月から、アウェアネスをトレーニングするクラスを新設しました。自分自身と体を知り、自分の動きたいように体をコントロールできるようになるというものです。またこのトレーニングをすることで、スタイルを習うクラスの助けにもなります。来年にはスロベニアやヨガスタジオでワークショップがあるので、「Asuka Method」を広めていかれたらと思っています。

P 怪我や度重なる手術に打ち勝って、今はとても充実した毎日を送っていらっしゃるんですね。将来についてなにか計画がありますか?

オランダに来てもう10年以上になりますが、まだ29歳。これからもっとオランダ以外の世界も見てみたいです。他の国の人々と交流し文化を知りたいと思っています。それでも音楽やダンスそしてアート全体を見るとオランダは素晴らしいと思います。確かに年々助成金はカットされてきていて厳しいものがありますが、外国人にもチャンスを与えてくれるということには感謝しています。アカデミーでも、いろいろな国籍の生徒や同僚がいます。才能があれば国籍や人種は全く問わないというところがすごいです。 教えるのは好きなのでしばらくは今の仕事を続けて行きたいと思っています。振付師になったら?とよく聞かれるのですが、今はひとつのことをやるよりも、いろいろな経験を積んで新しい可能性を探っていきたいです。

Asuka Method