アレクサンダー・テクニーク教室を主催する椙本康世さん

アレクサンダー・テクニーク教室を主催する椙本康世さん

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今回は、アムステルダムで「アレクサンダー・テクニーク」教室を主催する椙本康世(すぎもとやすよ)さんに、この教室を開くことになった経緯をお聞きしました。P:ポートフォリオ、S:椙本さん

P: まずオランダでこの教室を始められた経緯についてお話してくださいますか?

S: はい。アレクサンダー・テクニークについては後で詳しくご説明しますが、オランダに来たきっかけはこのテクニークについて習うためでした。 日本でも大学に勤めをしながら勉強をしていたのですが、どうも自分にしっくり来なく一旦止めていたのです。それが働いていた勤め先での契約が切れたため自由時間ができ、もっとこの勉強を続けたいと思いオランダに来ました。 オランダに来たのは2014年の1月です。アムステルダムにあるこのプライベートの学校は学生ビザの発行がなかったので、3ヶ月毎に日本に帰り、またオランダに来るという生活をしていました。

P: それは大変でしたね。お金もかかるだろうし。

S:そうなんです。ところがちょうどそのころ日本人向けのフリーランスビザ(自営業者ビザ)が出るということを聞き、一か八かで申請したところ2年間のビザがとれたのです。目的は起業ではなく、あくまでも学校を続けるためでした。これが2015年6月です。2016年6月に学校は卒業したのですが、まだビザは1年も有効でした。それなら、切れるまで居心地のいいオランダにいることにしました。私にとってオランダはすごく居心地がいいのです。

P: そこでアレクサンダー・テクニークの教室を始められたのですね。

S: はい。でも残りの滞在可能期間は1年。そこで、また一か八かで(笑)、フリーランスビザの申請をしたところ、これもうまく通り5年間のビザが支給されました。たしかに、とてもラッキーでした。ただ、教室を開いたところで、アレクサンダー・テクニークについてはほとんどどなたもご存知ないので、すぐに生徒さんは集められません。すこしずつ興味を持ってくれるかたがたが集まった今でも、午前中はアルバイトをしています。在日本の企業の仕事をオンラインでオランダで行うという仕事です。経理など総務一般です。

P: 大変ですね。実は私もアレクサンダー・テクニークについてよくわからないので説明していただけますか? 指圧やマッサージとは違うのですか?

S: 違いますね。アレクサンダー・テクニークはマッサージなどのような直接の治療は行いません。治してあげる治療というよりも、自分から治るように体の使い方を覚えるというものです。簡単に言えば、心と身体の使い方を再教育する方法で、タスマニア出身の俳優アレクサンダー氏によって100年以上も前に始められたものなのです。この舞台俳優が、ある日突然声が出なくなるという問題に直面しました。医者にいっても埒が明かなかったのですが、身体の使い方に原因があるのではと考え、これを正したところ声が出るようになったのです。その後イギリスでこのアレクサンダー氏が考案したテクニークが広まり現在に至っています。身体の使い方を覚えることでパフォーマンスの向上が期待できます。

P: どんな人がこのテクニークを使っているのですか?

M: 俳優や音楽家そしてダンサーが多いですね。音楽家は声楽家だけではなく常に不自然な姿勢で楽器を使う人もこのテクニークを採用し、よい結果が出ています。もちろん、一般の人で肩こりや腰痛がある人もいらっしゃいます。身体の使い方を覚えるとこういった悩みも解消できるはずです。先日は学校の先生で、生徒の前で話がうまくできるようプレゼン能力を改善したいというかたもいらっしゃいました。これはビジネスシーンでももちろん使えます。

P: 面白いですね。

S: はい。大切なものは、既に自分の中にあるのです。このテクニークを発展させたF.M. アレクサンダーさんは、ひたすら鏡に写る自分の姿を観察することで、こころとからだの統合された使い方を学んでいったのですよ。まさに、自分の中にある答えの発見でした。 私が、そのような、既に自分の中にある答えを発見する道具として、アレクサンダー・テクニークを選ぶ理由は、おもに二つ。シンプルであることと身体性を忘れないことです。特に、からだを忘れないことで、無限のアイデアや望みや思考が、宙に浮いたものでなく、今ここに生きている私たちの現実になるのだと思います。

アレクサンダー・テクニーク